日本光学会について

初代会長 黒田 和男

会長 黒田 和男
(東京大学名誉教授。
宇都宮大学特任教授)

日本光学会は,昨年9月に一般社団法人としての登記を済ませ、本年1月より学会活動を開始いたしました。日本光学会の前身である光学懇話会は応用物理学会の中の一組織として1952年に設立されました。その誕生から数えて63年目の再出発となります。新生日本光学会の初代会長に選任されたことは,大変名誉なことであります。と同時に,一つの学会を立ち上げ,運営することの責任の重さを考えると身が引き締まる思いで一杯です。

独立したことにより日本光学会は何が変わるのか。継続することと、新たに挑戦することの両方を目指したいと考えています。今回の独立はこれまでの活動を否定するものではありません。これまでの62年間,はじめは光学懇話会として,1989年に改名してからは日本光学会として,機関誌「光学」,英文論文誌Optical Reviewを発行し、年次大会(OPJ)や各種講演会を開催するなど,学会活動を連綿と続けて来ました。再出発にあたり,その歴史的な重み,大きな慣性力を十分感じざるを得ません。2015年の新生日本光学会の事業は,これまでの分科会日本光学会の事業をほとんどそっくり引き継ぎます。したがって,活動を見る限り、今年と昨年でほとんど違いは見えないかもしれません。しかし独立することにより,自分自身以外に束縛するものはなく,すべてを自分で決める自由を得ました。さらには質量も小さくなり,世の中の流れに身軽に対処できるようになりました。この効果は,時間の経過とともに確実に現れてくるものと信じます。新たな挑戦としてまず第1に日本光学会のスコープを拡げることを目指したい。レーザーの発明からすでに50年以上が経ち,現代光学も成熟して来ました。現在では,光技術は広く様々な分野に浸透し,光応用技術の裾野は広大です。新生日本光学会はこの広い分野に関わり合うことを考えています。

今年はユネスコにより国際光年(International Year of Light)と認定され,世界中のOpticsおよびPhotonicsに関連する学会や大学,企業,各種団体が独自のイベントを企画し,光の年を盛り上げようとしています。日本光学会も国際光年の事業に積極的に参加する所存です。多くの海外の光学会と既に連携協定の締結を済ませ,本年1月より実施されています。また,国際シンポジウムの共催など既に具体的な企画が進んでいます。国際光年を一つのきっかけとして中高生や大学生に対する教育啓蒙活動にも力を入れたいと考えています。

学会は、会員である研究者、技術者のために存在する組織です。その使命は,最新の研究成果を発表し,討論し,普及する場を提供することにあります。さらに,学界と産業界を結びつける役割も期待されています。要するに、会員間にコミュニケーションの場を提供することにあります。しかし、場を提供しても,登場人物が不在では意味がありません。多くの会員が参加して初めて目的が達成されます。すなわち学会は,会員が参加することにより成り立つ組織です。会員皆様の支援を心よりお願い申し上げます。

平成27年1月1日