【招待講演の概要】


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デジタルカメラ用光学系の評価法 (青野 康廣,株式会社ニコン 映像カンパニー開発統括部第二開発部)
  
フィルムカメラでは,画質はほぼレンズの光学性能で決まると言ってよい.一方,デジタルカメラでは,レンズ性能だけでなく,CCDの特性,画像処理があいまって総合的に画質が作り込まれる.それゆえ,デジタルカメラ用光学系の評価は,従来の光学性能評価だけでは不十分であり,最終画像を生成するプロセスまで含めた評価でレンズの設計を最適化する必要がある.本講演では,デジタル画像の色にじみに与えるレンズの色収差の影響を評価する手法を中心に,デジタルカメラ光学系固有の評価について紹介する.




次世代光ディスク用高NA非球面単レンズ (丸山 晃一,旭光学工業株式会社 光学研究部)
  
次世代高密度光ディスクシステムの規格として多数のメーカーより青色レーザーとNA0.85の対物レンズを用いる仕様が発表されている.現行の光ディスク用レンズには非球面単レンズが使われているが,次世代光ディスクの開発の過程ではNA0.85の対物レンズは2枚組レンズで作られてきた.単レンズでは製造誤差感度が高すぎ,製造困難と見られていたからである.我々は両面非球面1枚レンズの設計を見直し,実用レベルの収差を達成できるガラスモールドレンズを開発した.両面非球面単レンズの設計について詳報する.




プリズムを用いた超薄型デジタルカメラ用ズーム光学系 (萩森 仁,ミノルタ株式会社 技術センター光システム技術部)
  
We have developed and fabricated zoom lens unit for super thin digital camera. This lens unit has achieved very small thickness because we can use prizm effectively. I will explain the process of this new unit's development and fabricating.




回折現象とアポデゼイション−回顧録− (朝倉 利光,北海学園大学 工学部)
  
光学系の開口での位相,振幅分布を変えることで,回折像の性質が決定されることはよく知られている.適当な複素透過率を有するものを出射瞳に入れて,結像特性を希望のものにする研究が,アポディゼーションの名のもとにインコーヒーレント光学系で特に1950年代に盛んに行われ,レーザーの出現に伴い1970年代にはコヒーレント光学系でも行われてきた.これらの研究の発展を,回折現象との関連で回顧する.




眼球光学系の特徴と屈折矯正 (魚里 博,北里大学 医療衛生学部/ 同大学院 医療系研究科)
  
眼球光学系はカメラによく例えられるが,厳密には多くの点で異なっている.その代表的なものには,非共軸,非球面,偏心光学系,さらには屈折率分布型レンズや像面の湾曲,像空間の屈折率が物体空間と異なることなどがある.このような眼球光学系の特殊性を正しく理解しておくことは,眼科臨床検査や診断・手術のみならず人工視覚系の構築,視覚代行やマシンビジョンさらには検査機器の開発・視覚実験を実施する上でも極めて重要である.我が国でも20世紀末にエキシマレーザーの認可が下りて,角膜の屈折矯正手術が急激に普及している.従来の眼鏡やコンタクトレンズあるいは白内障手術時の眼内レンズなどによる光学矯正以外に手術矯正が加わったことでその選択の幅が広がり,不同視や不正乱視などの矯正にも期待がもたれている.このような白内障や角膜の矯正手術においても眼球光学系の特殊性を考慮することは,術後の視機能を高める意味からも重要である.本講演では,眼球の光学特性だけでなく,白内障を含む角膜矯正手術における眼球光学系について主に屈折矯正の観点から言及する予定である.




光学と視覚と環境 (大頭 仁,早稲田大学 総合理工学研究所)
  
光の学問は力学と並んで古い歴史を持つ古典物理学の中心であった.マックスウエルによる電磁波として統一され,波動としての理論と分析さらにその応用が目覚しく発展してきた.1900年のプランクの定数,アインシュタインの相対論などにより普遍定数の発見以来,光量子としての粒子像も確立した.そしてレーザの発明以来,情報の担い手として新たな光学の分野が現代技術の発展に繋がっている.一方,人間を含めた自然環境は光なしには存続し得ない.光と最も関連の深い人間の視覚の機能を考えながら,自然環境の問題を概説する.




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日本光学会(応用物理学会)主催/第27回光学シンポジウム