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37th Symposium Announcement in English


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第37回 光学シンポジウム
一般講演の概要

6月14日(木)

赤外光と可視光に対する色消し回折レンズの開発

油 鉄一郎1),油 大作1),布施敬司2)
ユーカリ光学研究所1), 住友電工ハードメタル(株)2)

加工用として用いられる高出力CO2レーザー(λ=10.6μm)をZnSeを材料とするレンズにて結像させる場合にアライメント用としてHe-Neレーザー(λ=0.632μm)が良く使用される。これを結像レンズとして用いるには結像位置及び結像倍率がそれら2波長で合致していることが重要となる.即ち波長隔差が非常に大きな場合における回折レンズによる色消し手法を確立した.設計と同時に試作を行い,良い結果を得たので報告する.

近赤外分光断層像計測による生体成分定量化計測

佐藤 駿,西山 成,石丸 伊知郎
香川大学

 提案する結像型2次元フーリエ分光法は,計測深さを合焦面内に限定して2次元の分光イメージングが可能である.そのため,深さ方向に合焦面を走査することにより生体膜の分光断層像取得が可能である。また、共通光路型の手のひらサCズの小型分光イメージング装置であり,日常生活空間などの非整備環境下での使用が可能である.本報告では,分光吸光特性からグルコースなどの生体成分の定量化を行う計測技術について述べる.

Off-axis 反射光学系におけるミラー配置誤差による収差補正アルゴリズムの開発

今泉 智,中野 貴敬,酒井真梨子
三菱電機(株)

 光軸が存在しないCook型の様なoff-axis反射光学系のミラー配置調整は難易度が高い.ミラー配置調整を効率的に行う為に撮像面とは異なる像高に配置した波面センサで得た波面収差量から撮像面上の偏心収差を推定して光学系中の一つのミラー配置調整で補正する技術を開発中である.本発表は補正ミラーの配置調整量の算出アルゴリズムと,それを適用したシミュレーション結果を紹介する.

フォトニック結晶アレイによる偏光の合流

川上 彰二郎1,2),川嶋 貴之1),佐藤 尚1)
(株)フォトニックラティス1),仙台応用情報学研究振興財団2)

 面型のナノフォトニクス集積光学系で,二つの偏光のどちらが入射しても偏光を変換(回折)・保存(直進)して所望の偏光に能率良く変換する素子を考案・解析し,集積導波路アレイにより実証した.一軸異方性フォトニック結晶を縞状周期構造配列し個々の主軸を周期方向から正負に傾ける構造をもつ.コンセプトを光線モデルにより説明し,波動解析と実験で実証する.

アクロマティック軸対称波長板による渦スペクトルの発生

若山 俊隆1),小牧 一希1),大谷 幸利2),吉澤 徹1,3)
埼玉医科大学1),宇都宮大学2),NPO三次元工学会3)

 近年,光渦や偏光渦は超解像等を実現する新しい光として注目されている.これを実現する軸対称偏光素子はいくつか提案されているが,波長や温度依存性が強かったり,空間分散が生じている.我々は波長と空間において分散のなく温度特性にも強い新たな軸対称偏光変換素子を提案する.ここでは軸対称偏光変換素子の諸特性を示し,位相と偏光の特異点の次数,すなわちトポロジカルチャージを変化させた渦スペクトルの発生法を述べる.

球形誘電体粒子による多重散乱の解析解と物理的解釈2

森 太省
キヤノン(株)

 粒子分散型光学素子内の粒子の散乱を見積もるため,球形誘電体粒子による多重散乱の解析解を導出したことを昨年報告した.本年は解析解の結果を数値的解法であるT-matrix法の結果と比較してその差異を物理的に解釈し,解析解が数値的解法の極限として振る舞うことを示す.そして,粒子配置を統計的に扱った解析解が,粒子分散型光学素子を想定した大規模領域での多重散乱解析に有効であることを示す.

複眼内視鏡に向けたガラスモールド波面符号化レンズアレイ一括成形

香川 景一郎1),田中 英治2),山田 憲嗣3),川人 祥二1),谷田 純3)
静岡大学1),パナソニックエレクトロニックデバイス(株)2),大阪大学3)

 我々は,複眼光学系に基づく次世代内視鏡を開発している.深い被写界深度と明るい光 学系を両立するために,球面収差を用いた波面符号化レンズを利用しており,従来は個々に成型したレンズを並べてアレイ化していた.複眼光 学系の機械的安定性向上と組み立て容易化のために,今回,波面符号化レンズアレイをガラスモールドにより一括成型する技術を開発した.本技術は,プレス前後で硝材の形状変化が大きいレンズにも適用できる.

極端紫外線光学素子の表面加工技術開発

金岡 政彦,瀧野 日出雄,野村 和司
(株)ニコン

 半導体集積回路の高集積化には微細加工技術が不可欠であり,露光装置いわゆるステッパーがそれを牽引してきた.用いる光の波長を短くすることで,著しい速度で進行する高集積化を可能にしてきたが,その一方で光学素子表面に要求される精度がより厳しくなった.現在13.5 nmの極端紫外線(EUV)を用いた露光が次世代技術として期待されており,これまでになく高い表面精度が必要となった.これを実現すべく加工技術の開発を行った.

次世代天文学観測装置用の新しい回折格子

海老塚 昇1),佐々木 実2),青木 和光3),Andrea Bianco4),Filippo Mara Zerbi4),関根 誠1),石川 健治1),近藤 博基1),堀 勝1)
名古屋大学1),豊田工業大学2),国立天文台3),INAF4)

 天体望遠鏡の大型化に伴い,高い分解能で同時に広い波長範囲が観測できる天文学観測装置として,高次回折光を利用して垂直分散素子と組み合せることによって2次元検出器上に広い波長領域を折り込むEchelle分光器の開発が求められている.本講演においてイタリアと共同開発しているEchelle分光器用の新しいVolume binary grating等について紹介する.

6月15日(金)

電気光学変調器と位相変調を用いた干渉測長計・光学式エンコーダの補間法の考察

上杉 修平, 倉島 貴広,熊谷 卓也,前田 能考,明田川 正人
長岡技術科学大学

 超精密位置決めステージの変位センサとして用いられる光干渉計や光学式エンコーダでは,波長或いは回折格子ピッチ以下の変位を決定するには補間が必要である.本研究では干渉縞信号に電気光学素子による位相変調を加え、同期検波を用いて補間法を光干渉計,光学式エンコーダに適用した.同期検波の復調からそれぞれ90°異なる2個の正弦波を得,方向弁別と位相補間を可能にする.

周波数標準を用いた光共振器絶対光学長測定

山下 綾平,伊藤 辰巳,村井 慶之介,明田川 正人
長岡技術科学大学

 メートル標準は,光速度を介した周波数計測に置き換えられる.2個のミラーからなる光共振器のミラー間隔は,共振器の最も隣り合った共鳴点間の周波数差(Free Spectral Range: FSR)の測定から決定できる.FSRは真空中の光速度の半分c/2(c:光速度)を共振器光学長(nL; n:屈折率 L:幾何学長)で割ったものに等しい(FSR=c/2nL).本報告では,電気光学素子と零位法により,周波数計測からFSR(すなわち絶対光学長)を直接決定する手法に関し述べる.

垂直カメラアレイ走査による全方向視差多視点画像入力システム

稲庭 衛,涌波 光喜,山口 雅浩
東京工業大学

 本研究室が提案する全方向視差多視点画像システムは,垂直カメラアレイの水平走査により物体を撮影し,垂直方向のカメラ間の視点を補間することで,高密度な光線情報の取得を実現とするものである.さらに,光線情報の取得範囲を拡大するために,水平走査と伴に回転させる機構を用い,広視域の光線情報の取得を可能とした.取得した物体の光線情報を用いて全方向視差ホログラフィックステレオグラム及び計算機合成ホログラムを作成し,その有効性を示した.

InGaAsP/InP フェーズドアレイ光偏向素子の設計および特性検討

崔 成漢,郭 命俊,財津 優,崔 洙赫,肥後 昭男,種村 拓夫,中野 義昭
東京大学先端科学技術研究センター

レーザとの集積,高速動作が可能というメリットを持つIII-V族半導体光偏向素子は,大規模光通信ネットワーク用超高速光スイッチ,LIDAR等への応用が期待されている.そこで,我々は2次元ビーム伝播法を用いてフェーズドアレイを用いたInP/InGaAsP半導体光偏向素子の設計を行い,各種パラメータと偏向角度の関係および低波長依存性を示した.出射端を自由空間にした場合,偏向角が±11.9°となることを示した.

双眼観察光学系

研野 孝吉
オリンパス(株)

 凹面鏡を用いて両眼で観察出来る虚像光学系は今までにあったが,大型の物であり小型で広視野角にすると,視度と輻輳が全画面内で一致せず,観察面が傾いてしまう問題があった.今回,水平画角35°垂直画角20°の虚像で視度と輻輳が一致した観察像を観察出来る光学系を設計したので,これについて報告する.

顕微鏡用液晶収差補正素子の開発とイメージング応用

田辺 綾乃1),横山 正史1),松本 健志1),栗原 誠1),橋本 信幸1),日比 輝正2),根本 知己2)
シチズンホールディングス(株)1),北海道大学2)

 我々は レーザー共焦点顕微鏡において,試料のカバーガラスの厚み誤差や深部観察などの要因により発生する収差を補正するデバイスとして液晶収差補正素子を開発した.さらに,素子の収差補正効果を実際に確認することに成功した.液晶収差補正素子によって電気的に収差を制御することが可能となり,さらに本素子は従来の光学系に適用することが可能である.

時系列信号方式コリニアホログラフィックメモリー

河崎 正人,藤村 隆史,志村 努,黒田 和男
東京大学

 本発表では,時系列信号方式コリニアホログラフィックメモリーのシステムを紹介する.これは,SLMの各画素を独立の信号チャンネルとみなし,ホログラフィックメモリーでありながら複数の信号チャンネルを同時に並列記録するものである.これにより,従来のページデータを記録する方式に比べて,データの記録密度と転送レートの向上が期待できる.記録再生のシミュレーションを行ったので,その結果についてもあわせて報告する.

空間成形された光パルスを用いたスピン波シンセシス

佐藤 琢哉1,2),照井勇輝1),守谷頼1),安藤和也3),齊藤英治3,4,5)
志村努1),黒田和男1)
東京大学1),JSTさきがけ2),東北大学3),JST-CREST4)
日本原子力研究開発機構5)

 スピン波の波数分布や伝播方向を光で制御する技術について提案する.円偏光パルスを磁性体に照射すると,逆ファラデー効果によりスピン歳差運動が誘起される.そのとき光スポット形状のフーリエ変換に相当するスピン波が誘起される.この原理を用いて,スピン波の伝播方向を制御する実験について述べる.さらに展望として,スピン波シンセシスが可能になることを述べる.

銀箔の発色に見られる興味深い現象

木下 修一1),江畑 芳2),吉岡 伸也1)
大阪大学1),京都造形芸術大学2)

 銀箔表面を硫化銀の薄い膜で覆うと,赤貝箔・玉虫箔と呼ばれる独特の発色を示す.このとき,通常の薄膜干渉で期待されるよりはるかに薄い膜厚で発色し,また,偏光によっても大きく変化する.膜の反射スペクトル測定と,薄膜干渉モデルで解析したところ,1)通常では発色には寄与しない0次の干渉が効いていること,2)ブルースター角周辺での反射振幅の符号変化ェ発色に大きく効いていることなどが分かった.

シリコンウエハの光学的特性を利用した非接触測温法

豊田 侑樹,井内 徹
東洋大学

 シリコンウエハ製造プロセスにおける放射測温法には,600℃以下での測定が困難なことや,表面膜厚の変動等による放射率変動などの課題がある.私たちはシリコンウエハが半透明体である比較的低温度域での温度測定に対応できる「p-偏光透過率を利用した非接触測温法」と,ウエハ上の絶縁膜の厚さ変化による放射率変動を克服する「放射率不変条件を利用した放射測温法」を考案した.
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