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【新刊紹介】ここから始める光学 光の教科書
新刊紹介
書 名:ここから始める光学 光の教科書
著者名:黒田和男、槌田博文他著、チームオプト編集委員会編
発行年:2016年11月
出版社:株式会社オプトロニクス社
ISBN :978-4-902312-54-6
定 価:3,200円(税別)
出版社へのリンク:http://shop.optronics.co.jp/products/detail.php?product_id=618
紹介者: 小椋行夫(公益社団法人応用物理学会微小光学研究会)
本書は12人の光学専門家が執筆した大変理解しやすいまさに光の教科書である。著者全員が一般社団法人日本光学会の会員もしくはチームオプト(株)の関係者で日本の光学会を代表するベテランぞろいである。内容は極めて分かりやすく明快に執筆されており、高校生、大学生および営業職などの理系でない人に特にお勧めの本である。高校の副読本としても活用できる。同様な書籍としては「光学の知識」山田幸五郎著、東京電機大学出版局刊(1966年初版)があるが本書はこの現代版とも言える新しい情報を盛り込んだ書籍である。口絵には20数種類のカラー写真があり、日常生活の中における光のかかわりをとらえ、光の現象が理解し易いように説明されている。また索引も充実しており語彙には英訳が併記されていて光学用語の辞典としても役に立つ構成になっている。編集委員が何度も打ち合わせを重ねて全体を構成したことがうかがえる洗練された本である。さらに出版元のオプトロニクス社が取り扱っているOSAキット(Optical Discovery kit)による実験との対応も示しており一層理解ができるように工夫されている。高校大学で教材として本書を利用するときはOSAキットの活用もお勧めしたい。
第1章から第3章の光線としての光学は最も基本的な幾何光学の説明で反射、屈折およびレンズによる結像の解説である。直進、反射、屈折が光の基本であり、レンズによって結像する光の特徴が述べられており本書の導入になっている。第4章から第7章は波動光学で光の干渉、回折、偏光が書かれている。光を波(電磁波)としてとらえることにより幾何光学では説明できない光の現象を説明している。第8章と第9章の自然界の光では日常観察できる光の現象を取り上げており蜃気楼、虹、空の青さなどの現象が光学的に理解できるように書かれている。人は目でこの世界を見ている。自然界の目に見える現象を光学の理論に沿って説明することは大変有意義なことである。なぜ目でものを見ることができるかは次の第10章で説明している。第10章は目のしくみと色の見え方で色に関する理解を深めることが出来る。
第11章以降は応用編である。第11章から第16章までは光学機器の解説でめがね、望遠鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡、光ディスクとレーザープリンターについて説明されている。第17章と第18章はレーザーとLEDについてである。さすがに前述の著書「光学の知識」には書かれていない内容であり、当然ながら最新技術の情報が盛り込まれている。特に第18章では半導体レーザーとLEDについて発光(発振)の原理が極めて明快に書かれており、この分野を得意としない筆者にも大変ありがたい章である。
最後の第19章は光学の理論体系で光と波の関連付けを解説している。本書を参考書とする初心者にはやや難しいところがあるが全部理解できなくても光学の基礎を学ぶについては支障がないのでこの章は一通り読んで頂ければ良いと思う。
以上のように本書「光の教科書」は光学の基礎分野をほぼ網羅しており必要な光学理論と技術が理解、学習できるようになっている。不足があるとすれば測光測色、光学薄膜の分野がやや少ないことと光学機器の分野での液晶ディスプレイ、プロジェクター、マイクロレンズアレイとスキャナーなどであろうか。本書は初めて光学を学ぼうとする人には大変良い教科書である。著者はいずれも光学分野でトップレベルの知識を持った人達であり是非本書の続きとして中級編を発刊されることを期待する。