1979年にレーザーディスクとして商品化された光ディスクは,その後CD,CD-ROM,MD,MO,CD-R/RW,DVD-ROM,DVD-VIDEOなどと急速にそして多様な発展を遂げて来た.この発展の重要な要素技術の一つに光ピックアップ用の光ディスクレンズがあげられる.ここでは先ず,光ディスクレンズの発展の経緯,中でも光ディスク用非球面プラスチックレンズの発展の経緯について述べる.次に今後の光ディスクの発展を予測し,特に高記録密度用の光学系やレンズの展望をはかりたい.
片面22GBのHD-DVDは次世代光ディスクとして期待されているが,短いWDの対物レンズの位置制御は,ディスクやドライブの破壊にもつながる重要な課題である.われわれは青紫LD用NA0.85の仕様の対物レンズを非球面レンズ2枚玉で設計開発することに成功した.このレンズは,WDが従来より長い特徴を有している.また,本対物レンズに最適な補正光学系を組み合せたピックアップ光学系について報告する.
回折光学素子は近年,様々な分野で応用されてきている.キヤノンは昨年,撮影レンズに応用可能な「積層型回折光学素子」を開発し,同素子を搭載した超望遠レンズEF400mm F4 DO IS USMについて技術発表した.そこに用いられている積層型回折光学素子の特徴と性能,どのように撮影光学系へ応用しているかなどについて講演する.
レンズ特許の抵触問題や自動設計における大域解の探索などを考える際に,レンズシステム間の類似性という概念が必要である.構成が同じ二つのレンズシステム間の類似性を量的に表わす類似度を定義し,幾つかのケースについて類似度を計算し考察した.また,自動設計で類似度を最適化することにより新しい解の探索を試みた.
レンズ評価の主特性である解像力や分解能を表すMTFや波面収差等はある種の積分値であるため,この値の変化量を評価関数に用いて各誤差因子の公差を決めようとすると,線形性に乏しく,実験計画法の直交表を利用した品質工学の許容差設計の手法がうまく機能しなかった.ここで提案するのはMTFに相関がある線形性にも富む新しい横収差量を考案し開発したので,これを利用した公差決定の手法についてのものである.
レーザー走査光学系の誤差感度低減設計を行った.レーザー走査光学系では,光源光学系の誤差によってポリゴンミラー以降の光学系に光線が入射する高さが変化し,性能変化を起こすことが問題となる.この問題を解消するために,3面の自由曲面を用いて走査光学系の設計を行った.
江戸時代の末までに,今日手にする多くの光学機器のプロトタイプが次々と舶載され,眼鏡を製造する家内制の手工業が育ち,やがてレンズを組み込んだ虫眼鏡,覗き眼鏡,望遠鏡,顕微鏡,写真鏡,幻灯器など光のハイテク製品を自製する人たちも現れた.この背景には,中国や西洋からの光技術の導入だけではなく,玉石の加工・研磨・穿孔などの古代からの伝統技術の継承がある.
他方,江戸中期のころから洋書が輸入され始め,光の科学にも関心が向けられるようになり,江戸末期には各種の視学諸器や眼による結像が,光線や光の屈折などを含めた幾何光学を基礎にして論じられるようになった.しかしながら.光の科学が育ってきてもそれを光の技術と密接に連係させる場は見られなかった.
江戸時代の光の技術のなかから,二三の話題を紹介する.
従来のホログラフィック光学素子(HOE)を用いたシースルー型情報表示装置は,HOEをコンバイナとして利用し表示の拡大には別の光学系を用いていたため大型で複雑な構成となっていた.我々はHOEの波面再現性を積極的に用いてコンバイナと拡大系の2機能を複合し,さらにプリズム内全反射を用いた効率的な光束折畳み光学系によって超薄型軽量のシースルー型情報表示装置を開発した.その設計と試作について報告する.
本研究では,我々が開発したホログラムCADツールの有用性を実験的に示すことを目標として,CADツールによるHOEレンズの設計とCGHを用いた収差補正を行った.まず,HOEレンズの仕様を設定し,記録条件を求めた.この条件でHOEレンズを作製して再生実験を行い,CADツールの解析結果と同じような再生像を得た.また,現れた収差と逆の位相波面を再生するCGHを介すことで,収差が補正されることを確認した.
ラゲールガウス(LG)ビームはドーナツ状の強度分布と特異点のある位相分布を持つ.我々はホログラムによるLGビーム生成法の確立のため,発生過程の数値シミュレーションに取り組み,高次の位相特異点の分裂に非点収差が関わっていることを明らかにして来た.この点について実験を含めてさらに詳しい検討を行ったので報告する.また,ホログラムの中心に対する再生光の軸ずれ等の影響についても検討を行った.
金属回折格子,またはラフな金属表面で生じたエバネッセント波の波数が縦波である金属表面プラズマ波の波数と等しいとき,表面プラズモン共鳴(SPR)現象が発生する.今回はRCWA (Rigorous Coupled-Wave Analysis) を用いて,Air/Metal/PMMA 回折格子のSPRに対して,解析した結果を報告する.
被写体の距離情報をもとに,奥行きある3次元画像を表示する方式を提案した.本方式は高解像度な光書込み型空間光変調素子(SLM)を用いて,奥行き標本化したホログラム画像を空間中に体積立体表示するものである.SLM性能と表示画像特性の関係を解析し,位相変調型SLMを試作するとともに,表示光学系を作製した.表示実験を行なった結果,7cm以上の奥行きをもつ3次元画像表示を可能とした.
パターン認識問題において,単一相関演算を用いて背景などを含む複雑な画像からターゲットを検出するのは困難である.そこで複数の相関演算結果を統合することにより,高い識別能力を持つ多重相関光システムを提案してきた.この多重相関演算を高速に実行する光システムを試作し検証実験を行った.この光システムを用いて複数の人を同時に検知した結果について報告する.
すばる望遠鏡FOCAS高分散グリズム(直視型分散素子)にはVolume-Phase Holographic Grating (VPHG)が使用される.VPHGを2個のプリズムで挟み込んだグリズムは従来のレプリカ格子グリズムで障害になる高屈折率プリズムと樹脂格子との臨界角の制限が緩いため高分散化が容易である.VPHGの最適作製条件を試作実験により決定し,プリズムと組み合わせたグリズムにて分光観測を行った.
すばる望遠鏡第二期観測装置候補の中間赤外線高分散分光器(IRHS, 仮称)は波長10μm帯にて分解能:R=λ/Δλ=200,000を達成するために分散素子として素材がゲルマニウムあるいはガリウムヒ素のImmersion gratingを採用する.本講演にてIRHSの開発状況および超精密3次元ダイアモンド加工装置を用いてELID研削法により試作したプロトタイプImmersion gratingの性能評価結果を報告する.
本研究では,音響光学変調器および光ファイバを用いたヘテロダイン干渉光学系により,ガス温度の時系列変化を非接触,高応答,高精度で計測できるシステムの構築を行った.このシステムを用い,定積容器内火炎伝播中の未燃焼混合気の温度履歴を計測し,計測限界,計測精度の評価を行った.温度計測分解能は0.5〜0.8Kであり,定積容器内燃焼研究における未燃焼混合気の温度変化には十分使用できる.
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)アレイを用いた共焦点顕微鏡システムを実現した.VCSELを用いたビーム並列化により,システムの高速化,光の利用効率向上,光学系の簡易化等が可能となる.VCSELアレイ,対物レンズ等を用いた基礎実験システムにおいて,チャンネル間に相互干渉がないこと,及び一様な深さ分解能を確認した.また,ピンホールアレイを用いた並列化方式に対する空間密度の向上を実験的に検証した.
半導体ウェーハの口径拡大等により,産業界で300mm以上の口径の平面度測定が重要な課題となってきた.産総研では,3枚の測定平面を組み合わせてフィゾー干渉計で測定から基準面を用意せずに平面度測定を行う手法を研究しているが,その実験結果及びフィゾー干渉計の高分解能化のための画像処理手法,位相変調法としてのピエゾ素子駆動と波長走査法の比較等について,最近の国内外の研究動向と共に紹介する.
長さの精密測定は,科学技術の分野だけでなく,半導体産業や精密工業の分野におい重要なテクノインフラとして求められて来た.特に現場において,寸法管理は製品の高品質化に重要であり,光波干渉による測定は必然である.このような測長技術の精密化に寄与した技術は,量子エレクトロニクスによるところが大きい.ここでは,これらの技術の当該分野における進展に関して紹介し,さらに,非線形光学などを取り入れた将来に関して紹介する.
LSI技術の高性能化にプリント基板上の電気配線技術が追随できなくなる,いわゆるI/Oボトルネック問題の解決を目指し,光インターコネクション技術の研究が盛んに行われている.我々は,バイナリオプティクスを用いた平板光学基板と,光素子を一体集積したLSIチップとを用いたチップ間光インターコネクション技術について研究を行っている.本論文では,光回路構成および要素技術について説明し,実験結果について報告する.
装置内の高速大容量伝送に対する電気配線のボトルネックを解消する手段として,拡散伝播を利用したシート状光データバスを提案している.今回,光シートバスを用いたバックプレーンバスシステムを試作し,その特性を評価したので報告する.
ビルディングブロックとして光ファイバ片などを含むスティック状の素子を集積することにより,光電子素子を構築するパッケージング法について提案している.スティック素子は,光ファイバ片や円筒上にパターン化されたシリンドリカル半導体集積回路,形状記憶合金ファイバを用いたムービングミラーなどで構成され.光ファイバスイッチ素子や光ファイバ干渉計素子を具体例として示す.
半導体レーザーや発光ダイオードを始めとする光半導体デバイスの光学特性,電気的特性,温度特性の解析,設計に用いるWindows版デバイスシミュレータを開発した.導波モード解析,バンド構造解析,熱伝導解析等がWindows上のビジュアル環境で実行できるため,データ入出力が容易である.これらのシミュレータ構築と高速化手法,シミュレータを用いたデバイス設計,特性解析について述べる.
発光効率約30 lm/Wの白色LEDを約1000個アレイ状に配列した多点光源を試作し,その最適設計条件を多点光源理論により探求し,実験との比較により評価した.応用としてLED照明光源を用いた室内灯,街灯,ネオンサイン等を試作し,それぞれの光学デバイスの基礎特性および照明システムモデルについて述べる.
サブ波長格子に正入射付近の角度で光が入射する場合は回折波の発生はなく,0次だけの透過光と反射光になり,さらに格子形状が三角形である場合は,格子の深さ方向に屈折率が徐々に変化するため反射光も0となる.一方,光が斜入射する場合は回折波が発生する事となる.この特徴を利用すると回折作用により導光板から光を取出すことが可能である.本論は入射角度に応じて反射防止作用と光の取りだし作用を行うサブ波長格子の特徴検討および試作結果について述べる.
フォトニックネットワーク技術なくしては将来の情報通信ネットワークインフラは有り得ない.本講演では,フォトニックネットワークのパケット転送技術に着目し,技術動向および今後の研究開発課題について展望する.とくに,近未来の技術課題であるWDMネットワークにおける波長ベースのパケット転送技術と,究極的な目標である光領域でのパケットヘッダの認識をベースとするフォトニックIPパケットスイッチに焦点を当てる.
光符号ラベルを用いたフォトニックパケットルーティング実験システムの解説と,ラッチング機能を有した短パルス制御光ゲートスイッチを用いた,10Gbit/sパケット転送実験の結果報告をおこなう.
我々は,室温で大きな3次非線形感受率(〜10-6esu)をもち,かつ応答速度の速い(数ps)無機有機複合型量子井戸物質 (C6H13NH3)2PbI4を用いて,四光波混合過程を利用した光信号の時間−空間変換を行なった.その結果,室温においてパケット間隔7ps,ビット間隔1psの光信号(nJオーダー)の読み出しに成功した.