【第34回 光学シンポジウム 開催報告】

実行委員長の挨拶

34回光学シンポジウムは、200972日、3日の両日、東京大学生産技術研究所An棟コンベンションホールにて開催され、皆様のお陰をもちまして盛況のうちに終了致しました。

本シンポジウムは、産学の有志により産学連携の更なる発展を目指して1976年に創設されました。それ以来、光学シンポジウムは毎回開催され、最新の研究成果に対して実用的な論議が活発に行われることから、企業の技術者に多数参加頂いている特長があり、研究者と技術者の貴重な交流の場となっています。しかしながら、本年度は世界的な不況や新型インフルエンザの影響で企業からの参加者の減少が懸念され、例年並みの規模で開催できるか危惧しておりました。しかし、実際には産学から多数の講演応募があり、最終的に講演数は26件で昨年以上となりました。また、参加者数も約300名となり、予想を超えた盛況なものとなりました。特に今回のシンポジウムでは例年以上に早期申込が多く、100名を超えました。これは、早くからシンポジウムが注目されていたことの表れと思っています。

今回のシンポジウムでは、招待講演として7テーマをお願致しました。

奥野丈晴様(キヤノン)には、従来の多層膜とは異なる反射防止膜手段として注目されている『サブ波長構造を用いる “SWC”』について、その原理と効果についてご講演頂きました。また、大槻正樹様(ニコン)には『ヘッドマウントディスプレイ メディアポート UP』で搭載されている2層回折光学素子を用いた光学系の特徴や、製品におけるユーザビリティの工夫、安全性についてご講演頂きました。高橋浩一様(オリンパス)からは『自由曲面光学系を用いた超小型イメージングシステム』の特徴と、セキュリティー分野や車載カメラ等への適用についてご講演頂きました。これらの企業からのご講演により、日本産業の根幹であるものづくりの重要性について示して頂けたと思っています。

納富雅也様(日本電信電話)には『フォトニック結晶による光制御の最前線』と題し、「光を閉じ込める」技術と「光を遅くする」技術についてご講演頂き、これらの技術を用いたメモリやデバイスへの応用についてご紹介頂きました。越田信義様(東京農工大)には『発光性ナノシリコンの多機能性と応用展開』について、ナノ構造がもたらす物理効果の特色と様々な応用研究をご紹介して頂きました。両講演を通して、半導体技術と光学の融合により可能になる最新の光を操る技術について示して頂き、シリコンフォトニクスに関する最新の研究の一端に触れることができました。

河田聡様(理化学研究所)には『回折限界を超える金属ナノレンズ』と題し、表面プラズモンを利用した様々なイメージング技術の原理や、バイオイメージングへの適用等についてご講演頂きました。小池康博様(慶應大)からは『フォトニクスポリマーの新展開』と題し、プラスチックの特性を使いこなすことで可能となる様々なアプリケーションについてご講演頂きました。特に先生がご提唱された「人間調和型のイノベーション」には、様々な分野の研究において重要なキーワードになるものと思いました。両講演とも、技術だけではなく、研究に対する取り組み方に関しても大変参考になるものだったと思います。

また、一般講演においても、様々なジャンルの興味深い研究報告があり、全セッションにおいて有意義な論議が繰り返されました。両日を通して、今回のシンポジウムが参加者の皆様にとって実りある内容であったと思っております。

尚、来年の光学シンポジウムも7月上旬に東京大学生産技術研究所に於いて開催される予定です。次回は、第35回と区切りの年となりますので、益々の産学連携の場として有用性を高められるよう新しい試みも検討したいと思っております。また、皆様よりお答え頂いたアンケートをもとに本シンポジウムを仔細に評価し,今後の運営に役立てていきたいと思っております。皆様には今後も光学シンポジウムへの積極的なご参加と、日本光学会へのご支持をよろしくお願い申し上げます。

尚、今回のプログラムで招待講演が1件キャンセルとなったため、直前にタイムテーブルの変更をさせて頂きました。多数の皆様にご迷惑をおかけしたことを、この場を借りてお詫び申し上げます。

最後になりましたが、本シンポジウムの運営にご協力頂きました東京大学生産技術研究所の皆様、日本光学会(応用物理学会)関係の皆様、そして約8ヶ月に渡りご尽力頂いた光学シンポジウム実行委員会の皆様、アドバイザー各位に心から感謝を申し上げ、開催報告とさせて頂きます。

34回光学シンポジウム実行委員長

オリンパス株式会社 大出 寿


講演会の様子

日本光学会幹事長の谷田貝豊彦先生より開会の辞を賜りました。


キヤノン(株)奥野丈晴様より、
「サブ波長構造による高性能反射防止膜"SWC"の開発」
という題目でご講演いただきました。


オリンパス(株)高橋浩一様より、
「自由曲面光学系を用いた超小型イメージングシステムの開発」
という題目でご講演いただきました。


理化学研究所 河田聡先生より、
「回折限界を超える金属ナノレンズ」
という題目でご講演いただきました。



日本電信電話(株)納富雅也様より
「光閉じ込めとスローライト 〜フォトニック結晶による光制御の最前線」
という題目でご講演いただきました。


東京農工大学の越田信義先生より、
「発光性ナノシリコンの多機能性と応用展開」
という題目でご講演いただきました。



(株)ニコン大槻正樹様より
「ヘッドマウントディスプレィ メディアポートUPの開発」
という題目でご講演いただきました。



慶應義塾大学の小池康博先生より
「フォトニクスポリマーの新展開 〜Fiber-To-The-Displayへ向けて〜」
という題目でご講演いただきました。

会場の様子

展示会場の様子


東京大学生産研究所のコンベンションホールにて


懇親会の様子

 

 

        


実行委員