第41回 光学シンポジウム
招待講演の概要

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光音響イメージング技術の現状とその医学生物応用

講演者
石原 美弥 (防衛医科大学)
講演概要
光吸収体の分布を画像化する光音響イメージング技術は、光技術と超音波技術の利点を活用できる。装置としても顕微鏡タイプから超音波画像診断装置と同様の形態、CTと同様の形態とレーザーの照明方法と検出の方式のバリエーションに富む。本講演では、技術的な特徴を中心に実際の応用まで、本イメージング技術の発展に期待を込めて紹介したい。

望遠監視カメラ向け霧補正画像処理技術

講演者
菊地 太郎 (株式会社リコー)
講演概要
望遠監視カメラでは、霧やかすみ・PM2.5などの大気中の粒子の散乱の影響により、視認性が著しく悪化する。そこで、視認性を向上させるために、近年霧の散乱モデルを利用して、霧の画像を補正する技術が幾つか提案されている。しかし、コントラストが不十分である処理やリアルタイムに向いていない処理ばかりであった。本講演では、霧の散乱モデルと局所的なコントラストを向上する処理を組み合わせて、従来手法の欠点を大きく改善した画像処理技術を紹介する。

大型放射光施設SPring-8におけるX線顕微CTの開発

講演者
竹内 晃久(高輝度光科学研究センター)
講演概要
SPring-8では、メゾスコピック領域の非破壊3次元定量観察を可能とする]線顕微CTの開発が進められており、現在は広く利用実験に供されている。]線光学素子として主にフレネルゾーンプレートを利用している。従来]線では不得手とされてきた軽元素系試料に対して、最大1000倍の感度向上が可能な位相コントラスト法を導入し、大きく利用の幅を広げている。本公演ではこれら光学系や基盤技術の紹介とともに、時間が許せば幾つかの利用例を紹介する。

車載用小型イメージングレーザレーダ

講演者
松原 弘幸 (株式会社豊田中央研究所)
講演概要
自動運転において、車両周辺状況を検知するセンサは大変重要な役割を担っている。我々は、距離および角度両方で高い分解能が得られるイメージングレーザレーダの研究を行っており、そのキーデバイスとして高感度受光素子Single Photon Avalanche Diode (SPAD)アレイを試作・使用している。これにより小型・低コストな構成で10fps、202x96点/flame、晴天昼間に反射率9%のターゲットを距離80mまで検知することに成功した。この技術について紹介する。

光渦ビームを用いた量子状態の可視化

講演者
鹿野 豊 (分子科学研究所)
講演概要
量子状態を特徴づけするためには一般的に量子状態推定という方法が使われ、実験データを統計的に処理したものから推定されてきた。しかし、我々は光渦ビームを弱測定理論と呼ばれる量子測定理論の一つの手法に適用することにより量子状態を可視化することができることを提案し、実証した。最初の例として、光の偏光状態を可視化し、次の例として量子情報科学で有用な量子エンタングルメント状態の可視化について議論する。

異常分散特性を持つ材料を採用した高度な色収差補正技術−BRレンズ−

講演者
石橋 友彦 (キヤノン株式会社)
講演概要
一眼レフカメラ/ミラーレスカメラ用交換レンズ EF35mm F1.4L U USM に採用した独自開発の「BR レンズ」(Blue Spectrum Refractive Optics)は異常分散特性を持つ有機光学材料を採用した複合レンズであり、極めて高水準の色収差補正を可能にする革新的な技術である。大口径レンズに「BR レンズ」を用いることで、絞り開放から高い描写性能を実現し、色にじみを大幅に低減した。この新開発の光学素子及び色収差補正技術について紹介する。

屈折作用による光量変調を適用した新規輪帯照明法 −iPS細胞の立体観察手法ー

講演者
鈴木 良政 (オリンパス株式会社)
講演概要
細胞のように無色透明な位相物体の観察手法として位相差観察法が広く用いられている。しかし、位相差観察法は細胞の輪郭が白く輝くアーティファクト(ハロー)が発生し、分解能が低下する問題がある。我々は、顕微鏡の照明光学系に形状を最適化したリングスリットを挿入するだけの非常にシンプルな構成で、ハローを回避しつつ位相物体の立体的な可視化を実現する新規輪帯照明法を開発した。本講演では新規輪帯照明法の構成と原理について解説したのち、iPS細胞の観察例と応用例について紹介する。

誘導ラマン散乱顕微鏡による高速無標識イメージング

講演者
小関 泰之 (東京大学)
講演概要
誘導ラマン散乱(SRS)顕微法では、2色のパルスレーザーを用いることで、生体の分子振動分光情報を高感度に捉え、無標識の生体を高速に観察することができる。本手法は、無標識での組織イメージングや、脂質等を始めとする小さな生体分子の可視化に有効と考えられている。本講演では、SRS顕微法の原理といくつかの応用について説明するとともに、最近著者らが取り組んできたレーザー光源の実用性向上に関する研究を紹介する。


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