第45回 光学シンポジウム
招待講演の概要

光メタマテリアルとその応用

講演者
田中 拓男 (国立研究開発法人理化学研究所)
講演概要
メタマテリアルは,波長より細かな人工構造を用いて物質の光学特性を制御した疑似材料である.メタマテリアルの構造をうまく設計すれば,自然界から直接得られる物質では持ち得ない特異な光学特性を付与できる.講演では,光学領域で動作するメタマテリアルの中でも,特に光を吸収するメタマテリアルを中心にその原理と特性を述べる.さらに赤外吸収メタマテリアルを用いた赤外分光法の高感度化技術など,メタマテリアルの応用技術についても紹介する.

天文技術補償光学を用いて生命の深部を生きたまま観察し操作する

講演者
玉田 洋介 (宇都宮大学)
講演概要
イメージングと光細胞操作は生命科学の発展に不可欠な役割を果たしてきた。一方、それらに残された大きな課題の一つに、「生命を通過した光の乱れ」が存在する。本講演では、生きた細胞や組織を通過した光の乱れを詳細に解明するとともに、天文学にて発展してきた補償光学を用いて光の乱れを補正し、生きた細胞の深部を高精度で観察することに成功した我々の研究について紹介する。また、関連研究の海外動向や将来の方向性について議論したい。

ディープラーニングの現状,限界と今後について

講演者
岡谷 貴之 (東北大学情報科学研究科・理化学研究所AIPセンター)
講演概要
深層学習は,AIのみならず工学全般,物理・化学などのサイエンスの問題にも盛んに応用されるようになってきており,その性能の高さと将来への期待から,「ソフトウェア2.0」などと呼称されるまでになった.その一方,深層学習(で得られるもの)は,学習データにきわめて強く依存する性質があり,それは多くの場合,実応用での大きな制約になっている.コンピュータビジョンを例に,その制約の実際と,それを克服するための取り組みについて,われわれの研究を含めた最新の研究状況を紹介する.

CeO2-PTFE系多機能膜の物性と特性
- 耐候性、表面硬度、柔軟性を有する多機能膜 -

講演者
多賀 康訓 (中部大学 薄膜研究センター)
講演概要
CeO2の持つ透明性と紫外光遮蔽機能および硬度およびPTFEに代表されるフッ素樹脂の柔軟性を併せ持つ新しい多機能膜をスパッタ成膜法により開発した。膜厚100nmのCeO2-PTFE膜は波長380nm以下の紫外光の大半を遮蔽し無機ガラスの2〜3倍の表面硬度と〜1cm径の耐曲げ性を合わせ持つことが判った。今後、部材メーカーと連携しながら、省エネ軽量化や耐環境性応用製品開発等に向けた社会実装の検討を開始する。

採血不要の血液濁度計の開発と展望

講演者
飯永 一也 (メディカルフォトニクス株式会社)
講演概要
採血不要の血液濁度計を2020年3月に上市した。この装置は、非侵襲的に食後に増加する脂質成分を計測する装置である。基本原理は、近赤外光を用いた後方散乱計測によるものである。この計測技術は、北海道大学で生み出されたものである。この大学で生み出された基礎技術を、製品化するまでの開発要素などを踏まえ、大学発ベンチャーの成り立ち、成長と将来的な展開について紹介する。

液晶レンズ技術が拓くメガネの新次元
- 瞬時に度数を変えるTouchFocus®の開発 -

講演者
村松 昭宏 (三井化学株式会社 新ヘルスケア事業開発室)
講演概要
現代のシニア世代は肉体的にも精神的にも 若くなっているといわれますが、視覚の衰えは誰もが避けて通れない課題です。TouchFocus®はこのようなシニア世代のQOLの向上を目的として開発されました。搭載されている電子液晶レンズは液晶分子の配列制御により電子的な近用度数が出現させています。講演では、歪み・ボケが少ない快適な視界を実現したTouchFocus®の技術とメリットを紹介する。

自然に隠された美を先端技術で発見する

講演者
土佐 尚子 (京都大学)
講演概要
古来、美は私たち人間の進化の基準になってきた。芸術家は、自然から美を採集してきた。まだまだ自然には、私たちの裸眼で見えない美の造形が潜んで居る。その美を、最先端技術を使って発見し、可視化するアート&テクノロジーの実験的研究方法を解説する。そして、そこから出来上がったアートを社会実装するアートイノベーションに関しても紹介する。

ASKA3D空中結像の幾何学的考察と今後の開発動向

講演者
大坪 誠 (株式会社アスカネット エアリアルイメージング事業部)
講演概要
本デバイスは、空中に極めて高画質な実像を結像させる受動系の“光学結像パネル”で、空中サイネージや、非接触操作系に応用が期待されております。特に昨今の新型コロナウイルス感染問題は世界的に深刻な問題であり、不特定多数の人が触るタッチパネルに、急速に「非接触系」への関心が高まってきております。本講演では、空中結像の原理、写像概念に基づく空中結像の幾何学的考察、基盤技術の紹介、応用分野、実績紹介、空中結像の現状と課題、今後の開発動向等について、ご報告させて頂きます。



Copyright © 2020 Optical Symposium. All Rights Reserved.