第42回 光学シンポジウム
招待講演の概要

変幻灯:静止物体に動きを与えるプロジェクションマッピング

講演者
西田 眞也 (日本電信電話株式会社)
講演概要
実際には静止した物体がまるで動いているように見えるプロジェクションマッピング技術「変幻灯」を開発した。投影対象の動き映像を生成し、静止画像との差分から動きのそれも輝度成分だけを投影するというもので、投影対象の色成分は静止し、輝度成分も物理的に正しい動きをしていなくても、人間の視覚系の運動検出と情報統合の仕組みを通した結果として錯視的に対象が動いているように見える。

VR酔いの主要な原因と対策:新たな視覚体験技術の展開にむけて

講演者
氏家 弘裕 (産業技術総合研究所)
講演概要
より高精細なバーチャルリアリティ(VR)環境が身近なものとなり、VRのさまざまな分野での利用が期待されている。しかしVR環境を優れた技術として発展させるためには、同時にVR酔い等好ましくない生体影響の軽減に十分に配慮することが重要である。本講演では、VR酔いを映像酔い等と比較しつつそれらの主要な要因に関する科学的知見について概観し、その対策として現在進められつつある人間工学的指針の国際標準化について紹介する。

HOPTECHについて-波面印刷技術から投影型ホログラフィック3D映像技術まで-

講演者
涌波 光喜 (情報通信研究機構)
講演概要
計算機で設計した波面情報をホログラムとして出力可能な波面印刷技術は、3Dデータの高精細な可視化や、これまで作製が困難であった特殊な光学素子の製造といった応用が期待できる。本講演では、波面印刷技術の概要を説明したのち、3Dデータの出力例や波面印刷技術によって作製した光学スクリーンとホログラム映像を投影するホログラフィックプロジェクタを組み合わせたホログラフィック3D映像技術を紹介する。

フレネルゾーン開口によるレンズレスライトフィールドカメラ技術

講演者
中村 悠介 (株式会社日立製作所)
講演概要
従来のレンズレスカメラ技術は、撮影画像の現像処理に重い計算が必要であった。そこで我々は、外側ほど間隔が狭くなるFZA(Fresnel Zone Aperture)を画像センサー直前に配置する構成により、従来比1/300の低演算負荷かつ撮影後の容易なピント調整を可能とするレンズレスライトフィールドカメラ技術を開発した。本講演では、撮影原理とノイズ低減方法、ならびにプロトタイプでの撮影結果について紹介する。

我が国の光産業の最新動向と今後の展望

講演者
小林 直人 (早稲田大学)
講演概要
我が国における光産業は2007年度に国内生産額が10兆円程度であったが、その後のリーマンショック、東日本大震災等を経て、現在9兆円弱の産業規模に留まっている。本講演では主要光産業(光情報通信、光情報記録、光入出力、ディスプレイ・固体照明、太陽光発電、レーザ加工、センシング・計測)の近年の動向および今後の展望について光産業技術振興協会の光産業動向調査を基に概説し、併せて世界の光産業動向についても言及する。

再生医療実現に向けたiPS細胞培養の画像評価による品質管理技術

講演者
清田 泰次郎 (株式会社ニコン)
講演概要
京都大学 山中教授により発明されたiPS細胞は、従来の生物学研究を更に発展させる画期的なものであり、かつその応用用途も広い。治療方法がなかった難病に対しても細胞を治療とする再生医療もその一つである。我々は、再生医療の細胞製造で用いるライブセルイメージングと画像解析技術を組み合わせた細胞の品質評価技術を開発した。本講演では、ライブセルイメージングと画像解析の原理を開設したのち、実際のiPS細胞品質技術の応用事例の紹介を行う。

内視鏡結像・照明光学系の現状と今後

講演者
進士 翔 (オリンパス株式会社)
講演概要
人をできるだけ傷付けずに体内の様子を見たいという医学的な要求に応えるために、内視鏡は開発され発展してきた。外部から光が届かない空間を観察するため、また観察対象である生体組織の特徴から、照明光学系と結像光学系のそれぞれに内視鏡特有の技術開発がされてきた。現在、内視鏡には様々な種類があり、検査・診断・治療といった幅広い領域で使用されていが、本講演では、その中から、消化器に用いられる医療用ビデオ内視鏡の光学技術を中心に紹介し、また最新技術についても紹介する。

画像認識研究の現状と行動分析への応用

講演者
加藤 典司 (富士ゼロックス株式会社)
講演概要
深い階層構造を持つニューラルネットであるDeep Neural Networkの登場により、近年の画像認識の性能は著しく向上し、写真中の物体認識など一部のタスクでは人間を凌駕するものも現れている。これを受け、画像認識は基礎研究の段階から実応用の段階に入っている。本公演では、近年の画像認識の研究動向や応用事例について紹介し、さらに、今後の方向性として動画像による人物行動認識の可能性を議論する。



Copyright © 2017 Optical Symposium. All Rights Reserved.