第42回 光学シンポジウム 講演プログラム
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6月22日(木)
受付開始 9:00〜
午前の部 (9:40〜12:30)
開会の辞 (9:40〜9:50) |
一般社団法人 日本光学会 会長 谷田 純〔大阪大学〕 |
1.変幻灯:静止物が動いて見えるプロジェクションマッピング【招待講演】
(9:50〜10:30) |
日本電信電話(株) NTTコミュニケーション科学基礎研究所
○西田 眞也, 吹上 大樹, 澤山 正貴, 河邉 隆寛 |
実際には静止した物体がまるで動いているように見えるプロジェクションマッピング技術「変幻灯」を開発した。投影対象の動き映像を生成し、静止画像との差分から動きのそれも輝度成分だけを投影するというもので、投影対象の色成分は静止し、輝度成分も物理的に正しい動きをしていなくても、人間の視覚系の運動検出と情報統合の仕組みを通した結果として錯視的に対象が動いているように見える。
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2.
縦型超短投射プロジェクタの小型投射光学系の開発
(10:30〜10:50) |
(株)リコー
○高野 洋平, 辰野 響 |
我々はFull-HD(1920*1080)に対応した縦型超短投射プロジェクタの小型な投射光学系を新たに開発した。小型化を実現するために、以下の3つの手段を用いた。 - 平面ミラーにより光路を折り曲げる
- レンズ系に負の歪曲を持たせることで、空間を確保し、高画素化に必要なレンズ系のサイズの増大を吸収する
- 自由曲面ミラーにより投影画像の歪曲を補正する
本発表ではこれらについて詳しく説明する。
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─ 休憩 (10:50〜11:10) ─
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3.
画像認識研究の現状と行動分析への応用【招待講演】
(11:10〜11:50) |
富士ゼロックス(株) 研究技術開発本部コミュニケーション技術研究所
加藤 典司 |
深い階層構造を持つニューラルネットであるDeep Neural Networkの登場により、近年の画像認識の性能は著しく向上し、写真中の物体認識など一部のタスクでは人間を凌駕するものも現れている。これを受け、画像認識は基礎研究の段階から実応用の段階に入っている。本公演では、近年の画像認識の研究動向や応用事例について紹介し、さらに、今後の方向性として動画像による人物行動認識の可能性を議論する。
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4.光学学習を用いた無収差復元信号処理のアクションカメラへの応用
(11:50〜12:10) |
リアロップ(株)1), (有)フィット2)
○奥村 明弘1), 長岡 暢2) |
人の視覚はシンプルな構造なのになぜ歪んで見えないのでしょう?実は脳が補正しているとも言われています。この脳が行なっている事を信号処理で出来たら、光学の世界は変わるのではないでしょうか? 本講演では、昨年の光学シンポジウムで発表した『光学学習を用いた無収差復元信号処理技術の開発』の技術を、アクションカメラに適用し、その効果を確認したので報告します。
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─ 展示企業告知 (12:10〜12:30) ─
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─ 昼食 (12:30〜13:30) ─
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午後の部 (13:30〜17:10)
5.
HOPTECHについて -波面印刷技術から投影型ホログラフィック3D映像技術まで-【招待講演】
(13:30〜14:10) |
情報通信研究機構
涌波 光喜 |
計算機で設計した波面情報をホログラムとして出力可能な波面印刷技術は、3Dデータの高精細な可視化や、これまで作製が困難であった特殊な光学素子の製造といった応用が期待できる。本講演では、波面印刷技術の概要を説明したのち、3Dデータの出力例や波面印刷技術によって作製した光学スクリーンとホログラム映像を投影するホログラフィックプロジェクタを組み合わせたホログラフィック3D映像技術を紹介する。
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6.
共鳴領域の微粒子の断面形状計測とその応用
(14:10〜14:30) |
筑波大学 数理物質科学研究科1), 物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点2)
○星野 鉄哉1), 渡辺 紀生1), 青木 貞雄1), 桜井 健次2), 伊藤 雅英1) |
波長オーダーの微粒子の任意3次元断面形状の光計測を可能とする技術を初めて開発した。基板上の粉末粒子から特定の粒子を選択し、高速に計測可能である。この技術と吸収スペクトル計測を組み合わせることで、多数の粒子の成分を定量的に計測し、粒子ごとの成分分析ができる。実験例を基に、計測原理と厳密結合波解析のシミュレーションによる解析手順を示す。
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─ 休憩 (14:30〜14:50) ─
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7.
厚膜フォトニック結晶偏光分離プリズムの設計と作製
(14:50〜15:10) |
(公財)仙台応用情報学研究振興財団1), (有)オートクローニング・テクノロジー2) (株)フォトニックラティス3), 上智大学4)
○川上 彰二郎1,2,3), 川嶋 貴之3), 居城 俊和3), 千葉 貴史3), 高橋 浩4) |
メタ表面型偏光分離プリズムの問題点(例えば光吸収損失が大,光分岐角が小)を根本的に改善し、小形でロバストな厚膜フォトニック結晶素子を解析し光通信帯用に設計試作した。体積形のプリズムを,媒質が異方性を持つ導波路として解析し、 - (見た目がサイクロイドに似たパタンの)周期が大きいときの光線モデル
- 有限周期の解析解が光線モデルからどう離れるか
- 望ましい分離角、伝送特性上の許容範囲を明らかにした
また、設計においてはフォトニック結晶の特徴を最大に活かした曲線型を新たに提案し、自己クローニング法で実現した。動作実証試験の実験結果を述べる。
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8.
フォトニック結晶レンズの高性能化
(15:10〜15:30) |
(株)フォトニックラティス1), (有)オートクローニング・テクノロジー2)
○川嶋 貴之1), 居城 俊和1), 千葉 貴史1), 川上 彰二郎1,2) |
光通信において、異なるスポットサイズを持つデバイス同志を効率よく接続することは重要な課題である。それを解決するために、我々は人工誘電体であるフォトニック結晶の特長を生かし、基板面内で実効屈折率を変化させた直径10ミクロン以下、厚さ10ミクロン程度の平板型微小レンズの開発を行っている。これまでに原理実証実験を行ったが、今回はより結合効率を上げるための2種類の改善方針を提案する。
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─ 休憩 (15:30〜15:50) ─
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9.
近赤外用リン化インジウムイマージョン回折素子の実用化
(15:50〜16:10) |
キヤノン(株)
○助川 隆, 大倉 幸伸, 中保 友直 |
赤外分光におけるブレークスルーの一つとして中赤外向けのゲルマニウム製イマージョン回折素子に続き、世界で初めてリン化インジウム製イマージョンエシェル回折素子の開発に成功し、提供を開始した。リン化インジウムは1.5μm付近で屈折率3以上を有し、従来のシリコンでは適用が困難な機械加工により理想的な格子を実現している。高効率な近赤外分光が可能となることから、従来知られていない本素子の性能を報告する。
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10.
次世代天文学観測装置用の新しい高分散回折格子 III
(16:10〜16:30) |
理化学研究所1), 豊田工業大学 工学部2) 東北大学 学際科学フロンティア研究所3), シチズン時計(株) 研究開発センター4) 国立天文台 ハワイ観測所5), 国立天文台 TMT推進室6)
○海老塚 昇1), 岡本 隆之1), 竹田 真宏1), 細畠 拓也1), 山形 豊1) 佐々木 実2), 魚本 幸3), 島津 武仁3), 佐藤 慎也4), 橋本 信幸4) 森田 晋也5), 田中 壱6), 服部 尭6), 尾崎 忍夫6), 青木 和光6) |
すばる望遠鏡やTMT (Thirty Meter Telescope)等の次世代観測装置に搭載する新しい回折格子として、ハイブリッド・グリズム、Reflector facet transmission (RFT) grating、Birefringence VPH grating、シリコンのグリズム等の開発を行っている。これらの新しい回折格子のRCWAによる回折効率計算や試作の結果を報告する。
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11.我が国の光産業の最新動向と今後の展望【招待講演】
(16:30〜17:10) |
早稲田大学 研究戦略センター
小林 直人 |
我が国における光産業は2007年度に国内生産額が10兆円程度であったが、その後のリーマンショック、東日本大震災等を経て、現在9兆円弱の産業規模に留まっている。本講演では主要光産業(光情報通信、光情報記録、光入出力、ディスプレイ・固体照明、太陽光発電、レーザ加工、センシング・計測)の近年の動向および今後の展望について光産業技術振興協会の光産業動向調査を基に概説し、併せて世界の光産業動向についても言及する。
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─ 意見交換会(17:30〜) ─
シンポジウム参加者は無料です。皆様,奮ってご参加下さい。
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6月23日(金)
受付開始 9:30〜
午前の部 (10:00〜12:20)
12.内視鏡結像・照明光学系の現状と今後【招待講演】
(10:00〜10:40) |
オリンパス(株)
進士 翔 |
人をできるだけ傷付けずに体内の様子を見たいという医学的な要求に応えるために、内視鏡は開発され発展してきた。外部から光が届かない空間を観察するため、また観察対象である生体組織の特徴から、照明光学系と結像光学系のそれぞれに内視鏡特有の技術開発がされてきた。現在、内視鏡には様々な種類があり、検査・診断・治療といった幅広い領域で使用されていが、本講演では、その中から、消化器に用いられる医療用ビデオ内視鏡の光学技術を中心に紹介し、また最新技術についても紹介する。
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13.
奇数次非球面が持つ収差特性の理論的解析と設計での確認
(10:40〜11:00) |
東京工芸大学1), 昭和オプトロニクス(株)2)
○田邉 貴大1,2), 渋谷 眞人1) |
奇数次非球面が光学設計に有効とされている。数学的には、奇数次非球面は十分大きな有限項数の偶数次非球面で傾きも含めて近似できるが、実用的な項数では十分な近似精度が得られるとは限らない。すなわち、奇数次非球面は偶数次とは異なる特性を持つと予想される。そこで、奇数次非球面の収差係数を導出し、偶数次とは異なり高次収差を補正する能力があることを導いた。更に、その効果を実際のEUVL投影光学系の設計で確認した。
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─ 休憩 (11:00〜11:20) ─
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14.
3枚の球面と1枚の非球面で構成されたアプラナチック望遠鏡
(11:20〜11:40) |
京都大学1), 名古屋大学2), 国立天文台, 清原光学3)
木野 勝1), 佐藤 修二2), ○成相恭二3) |
望遠鏡の主鏡と副鏡が球面で曲率中心が一致していて瞳がそこに置かれるとコマは生じない。望遠鏡による像を球面の第3鏡と非球面の第4鏡で最終像面に結像させる。第3鏡による瞳の像の位置に非球面の第4鏡を置くと、コマが消える条件から第3鏡の曲率半径が決まり、球面収差が消える条件から非球面が決まる。瞳移動の公式により瞳を主鏡に移す。数値的に解くときには条件を緩めることができる。数値解の概要を報告する。
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15.VR酔いの主要な原因と対策:新たな視覚体験技術の展開にむけて 【招待講演】
(11:40〜12:20) |
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
氏家 弘裕 |
より高精細なバーチャルリアリティ(VR)環境が身近なものとなり、VRのさまざまな分野での利用が期待されている。しかしVR環境を優れた技術として発展させるためには、同時にVR酔い等好ましくない生体影響の軽減に十分に配慮することが重要である。本講演では、VR酔いを映像酔い等と比較しつつそれらの主要な要因に関する科学的知見について概観し、その対策として現在進められつつある人間工学的指針の国際標準化について紹介する。
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─ 昼食 (12:20〜13:20) ─
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午後の部 (13:20〜17:10)
16.
カラー開口撮像技術
(13:20〜13:40) |
(株)東芝 研究開発センター マルチメディアラボラトリー
○三島 直, 森内 優介 |
単眼カメラでカラー画像と距離画像を同時に取得できる撮像技術を開発した。レンズにシアンとイエローのカラーフィルタを内挿することで距離に応じてぼけの色が変化するように工夫し、ぼけの色と大きさを分析することで単眼カメラのみで距離を検出する独自の画像処理技術を開発した。微細なぼけ変化を高精度に分析することで、ステレオカメラ並みの距離精度が得られることを確認した。
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17.
赤外線レーザーを用いたFMCW法による3次元計測技術
(13:40〜14:00) |
(株)ニコン 産業機器事業部
日高 康弘 |
Time of flight (TOF) is indispensable range measuring method in large volume 3D measurement. In terms of the compensation for the low reflected light from the distant object, FMCW is exceptional among many TOF principles to improve the range accuracy. In this presentation, I will describe the principle and the practical configuration of the range measurement.
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─ 休憩 (14:00〜14:20) ─
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18.
再生医療実現に向けたiPS細胞培養の画像評価による品質管理技術 【招待講演】
(14:20〜15:00) |
(株)ニコン マイクロスコープソリューション事業部ステムセル事業開発室
清田 泰次郎 |
京都大学 山中教授により発明されたiPS細胞は、従来の生物学研究を更に発展させる画期的なものであり、かつその応用用途も広い。治療方法がなかった難病に対しても細胞を治療とする再生医療もその一つである。我々は、再生医療の細胞製造で用いるライブセルイメージングと画像解析技術を組み合わせた細胞の品質評価技術を開発した。本講演では、ライブセルイメージングと画像解析の原理を開設したのち、実際のiPS細胞品質技術の応用事例の紹介を行う。
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19.
超解像顕微鏡法における解像度評価用の微細スケールパターンの作製
(15:00〜15:20) |
オリンパス(株)1), 北里大学2), ブダペスト経済工科大学3)
○池滝 慶記1,2), 熊谷 寛2), ナンドール ボコル3) |
We fabricated a high resolution target pattern for a super-resolution microscope (SRM).A photo-resist dyed with Nile Red was scattered on a cover glass plate, and minute line and space patterns finer than the diffraction limit were transformed on the photo-resist layer by nano-imprinting. Using this resolution target pattern, we quantitatively confirmed the image properties given by the SRM.
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20.
透過型共通光路位相シフト干渉顕微鏡の高精度化
(15:20〜15:40) |
東京工芸大学 工学部
○陳 軍, 柿沼 慎, 相良 拓哉 |
光デバイスや生物細胞のような微小な位相物体の定量計測のため、ウォラストン・プリズムの横移動を用いた共通光路位相シフト干渉顕微鏡システムを開発している。顕微鏡の結像光学系にウォラストン・プリズムを導入することで試料の透過光を横方向にずらしてほぼ共通光路で干渉させることで、外乱の影響を受けない高安定・高精度の位相計測を可能にした。システムの構成や、位相計測の誤差原因及びその低減法について報告する。
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─ 休憩 (15:40〜16:00) ─
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21.
2in1カメラの応用探索
(16:00〜16:20) |
富士フイルム(株) R&D統括本部 画像技術センター
小野 修司 |
映像情報取得に好適なカメラとして、2種の映像を同時撮像できる「2in1 カメラ」を考案・試作した。2in1カメラは、同じイメージセンサを使いながら、レンズ交換するだけでさまざまな2種映像の同時撮像に対応できる。今回は「広角・望遠2画角2in1カメラ」と「2波長2in1カメラ」で得られる映像の特徴と、その特徴を活かす応用事例を紹介する。
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22.
フレネルゾーン開口によるレンズレスライトフィールドカメラ技術 【招待講演】
(16:20〜17:00) |
(株)日立製作所
中村 悠介 |
従来のレンズレスカメラ技術は、撮影画像の現像処理に重い計算が必要であった。そこで我々は、外側ほど間隔が狭くなるFZA(Fresnel Zone Aperture)を画像センサー直前に配置する構成により、従来比1/300の低演算負荷かつ撮影後の容易なピント調整を可能とするレンズレスライトフィールドカメラ技術を開発した。本講演では、撮影原理とノイズ低減方法、ならびにプロトタイプでの撮影結果について紹介する。
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閉会の辞 (17:00〜17:10) |
実行委員長 菊地 正〔キヤノン(株)〕 |
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