第45回 光学シンポジウム 講演一覧 (予稿集に掲載)
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1.
天文技術補償光学を用いて生命の深部を生きたまま観察し操作する
【招待講演】
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宇都宮大学1),基礎生物学研究所2),国立天文台3)
○玉田 洋介1),亀井 保博2),服部 雅之3) |
イメージングと光細胞操作は生命科学の発展に不可欠な役割を果たしてきた。一方、それらに残された大きな課題の一つに、「生命を通過した光の乱れ」が存在する。本講演では、生きた細胞や組織を通過した光の乱れを詳細に解明するとともに、天文学にて発展してきた補償光学を用いて光の乱れを補正し、生きた細胞の深部を高精度で観察することに成功した我々の研究について紹介する。また、関連研究の海外動向や将来の方向性について議論したい。
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2.
長作動距離液浸対物レンズにおける新たな色収差補正方法
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昭和オプトロニクス(株)
田邉 貴大 |
近年、生体試料の深部を観察するための顕微鏡機器において、長い作動距離の液浸対物レンズの要望がある。かかる対物レンズにおいては、レンズと試料との間に満たされる浸液の種類により、諸収差とりわけ色収差が変化するという問題があった。本講演では、この種の対物レンズの光学設計において、従来の補正環方式に替わる新しい色収差補正方法について収差論を交えて紹介する。
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3.
超解像顕微鏡法に用いる高精度複合型2色位相板の作製と評価
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NTT-AT(株)1),北里大学2),ブダペスト工科経済大学3),オリンパス(株)4)
○永井 宏明1),小平 晃1),丸山 隆志1),熊谷 寛2),Nándor Bokor3), 池滝 慶記2,4) |
蛍光抑制と波面制御光学系による超解像顕微鏡法では励起光と蛍光抑制光の2波長の位相を制御する機能性位相板を高精度に作製することが重要である。本研究では、物体面における横方向および光軸方向に超解像性が得られる複合型2色位相板を設計し、フォトプロセスおよびエッチングプロセス技術を用いて高精度に作製した。さらにこの位相板を超解像顕微鏡に設置することで蛍光抑制光の3Dダークスポットを生成し、その評価を行った。
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4.
スカラー電場モデルを用いたラゲール・ガウシアンビームによって与えられる
超解像顕微鏡の分解能の考察
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オリンパス(株)
池滝 慶記 |
We investigated lateral resolution for super resolution microscopy (SRM) given by Laguerre-Gaussian beam using scaler electric field model.
Using the property of FD, the FWHM of the point spread function (PSF) given by SRM can be presented by the analytical formula.
We can quantitatively predict lateral resolution in SRM.
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5.
画像処理による蛍光顕微鏡ZスタックデータのDOF調整と3D観察
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(株)ニコン
萩原 恒幸 |
新たに開発した画像処理アルゴリズムにより、蛍光顕微鏡のZスタックデータを用いて、任意の焦点深度のリフォーカス画像の生成や、デフォーカス像に任意の視差を与えて3D表示することが可能となった。本講演では新たに開発した画像処理アルゴリズムと蛍光顕微鏡画像のデータを用いた実証実験について報告する。
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6.
ディープラーニングの現状,限界と今後について【招待講演】
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東北大学, 理化学研究所
岡谷 貴之 |
深層学習は, AIのみならず工学全般,物理・化学などのサイエンスの問題にも盛んに応用されるようになってきており,その性能の高さと将来への期待から,「ソフトウェア2.0」などと呼称されるまでになった.その一方,深層学習(で得られるもの)は,学習データにきわめて強く依存する性質があり,それは多くの場合,実応用での大きな制約になっている.コンピュータビジョンを例に,その制約の実際と,それを克服するための取り組みについて,われわれの研究を含めた最新の研究状況を紹介する.
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7.
解剖学的知見に基づく擬網膜回路(その2)
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国立病院機構東京医療センター
野村 博 |
網膜を構成する各ニューロンを適当な論理ゲート素子に置き換えただけの電子回路を考え、その動作をアルゴリズムで再現した結果、瞬間的に何かが動いたことを検知する、気づきの機能が出現した。市販のWEBカメラをパソコンに接続しただけの簡単な構成で、動きを10ミリ秒以内に検知し、その対象物の周辺を切り出して、動きから約1秒間程度を30fpsのフレームレートで撮影するシステムを構築することができた。
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8.
採血不要の血液濁度計の開発と展望【招待講演】
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メディカルフォトニクス(株)
飯永 一也 |
採血不要の血液濁度計を2020年3月に上市した。この装置は、非侵襲的に食後に増加する脂質成分を計測する装置である。基本原理は、近赤外光を用いた後方散乱計測によるものである。この計測技術は、北海道大学で生み出されたものである。この大学で生み出された基礎技術を、製品化するまでの開発要素などを踏まえ、大学発ベンチャーの成り立ち、成長と将来的な展開について紹介する。
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9.
ハイブリッドレンズを導入したカスケード光学系による 時間的空間的歪のないフェムト秒パルスビームアレイ生成
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東洋大学
○中野 秀俊, 丸尾 恵介, 尼子 淳 |
回折スプリッタと回折レンズの後段にアフォーカル系を接続したカスケード光学系は,色収差なく集光されたフェムト秒パルスビームアレイを生成する。しかし,アフォーカル系を球面レンズのみで構成すると,パルスフロント歪による波形歪が残る。そこで,球面レンズと回折レンズを組み合わせたハイブリッドレンズでアフォーカル系を構成した。その結果,時間的にも空間的にも歪みの少ないビームアレイ生成の可能性が実証された。
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10.
自由曲面を用いた薄型シースルー型光学ビュワーの光学設計
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山梨大学1), 東京工芸大学2)
○大竹 基之1), 渋谷 眞人2), 金 蓮花1) |
合波プリズムを用いた光学ビュワーはヘッドマウントディスプレイに適した方式の1つである。我々は高い屈折率のガラス製ウェッジプリズムを用いることで、全反射を保ちながらウェッジ角を小さくして、合波プリズムを薄くした。偏心収差を補正するために、自由曲面をリレーレンズを配置した。画角44度、射出瞳径φ4.8mmの具体的な検討を行った。更に、自由曲面の表現式として、XY多項式とZernike多項式を比較した。
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11.
液晶レンズ技術が拓くメガネの新次元 - 瞬時に度数を変えるTouchFocus®の開発 -【招待講演】
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三井化学(株)
○村松 昭宏, 七条 司朗, 岡田 好信, 彦坂 英一郎 |
現代のシニア世代は肉体的にも精神的にも 若くなっているといわれますが、視覚の衰えは誰もが避けて通れない課題です。TouchFocus®はこのようなシニア世代のQOLの向上を目的として開発されました。搭載されている電子液晶レンズは液晶分子の配列制御により電子的な近用度数が出現させています。講演では、歪み・ボケが少ない快適な視界を実現したTouchFocus®の技術とメリットを紹介する。
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12.
光メタマテリアルとその応用【招待講演】
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理化学研究所, 徳島大学, JST CREST
田中 拓男 |
メタマテリアルは,波長より細かな人工構造を用いて物質の光学特性を制御した疑似材料である.メタマテリアルの構造をうまく設計すれば,自然界から直接得られる物質では持ち得ない特異な光学特性を付与できる.講演では,光学領域で動作するメタマテリアルの中でも,特に光を吸収するメタマテリアルを中心にその原理と特性を述べる.さらに赤外吸収メタマテリアルを用いた赤外分光法の高感度化技術など,メタマテリアルの応用技術についても紹介する.
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13.
次世代天文学観測装置用の新しい高分散回折格子VI
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理化学研究所1), 豊田工業大学2), 国立天文台3), 東京大学4), 東北大学5)
○海老塚 昇1), 岡本 隆之1), 佐々木 実2), 田中 壱3), 服部 尭3), 本原 顕太郎4), 児玉 忠恭5) |
TMT(30m望遠鏡)や8.2mすばる望遠鏡、次世代宇宙望遠鏡用としてVolume binary(VB) gratingのMEMS技術を応用した新しい製作方法の開発を行っている。またReflector facet transmission (RFT) gratingと従来の反射型表面刻線型回折格子との様々な入射角に対する回折効率を比較した。これらの新しい透過型回折格子の開発状況を報告する。
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14.
有機単結晶を用いたテラヘルツ帯偏光子
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秋田大学
○島田 凌, 高谷 拓夢, 淀川 信一, 倉林 徹, 安達 恵美, 丹野 剛紀 |
テラヘルツ帯用偏光子の材料として有機結晶の偏光特性を評価した.強い異方性が期待される結晶構造と,偏光子として望ましい晶癖を有する有機化合物を結晶構造データベースで探索し,ヒットした4-ニトロ安息香酸メチルとピリミジン-4-カルボン酸の特性評価を行った.偏光分光分析では両化合物の単結晶が強い異方性を示し,量子化学計算の結果からは主な基本振動モードが結晶内でほぼ平行であることが明らかになった.
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15.
(取り下げ)
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16.
RIR光学系によるヘッドライト用超薄型光学モジュール
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三菱電機(株)
○諏訪 勝重, 桑田 宗晴, 澤井 直樹 |
超薄型のデザインと高い光利用効率を両立する新しいヘッドライト用光学系として"RIR光学系"を考案した。RIR光学系は、入射屈折面R(Refraction surface)と全反射面I(Total Internal Reflection Surface)、出射屈折面R(Refraction surface)を有するRIRレンズを含み、ヘッドライトのデザイン自由度を向上するとともに省エネにも貢献できる。
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17.
ASKA3D空中結像の幾何学的考察と今後の開発動向【招待講演】
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(株)アスカネット
大坪 誠 |
本デバイスは、空中に極めて高画質な実像を結像させる受動系の“光学結像パネル”で、空中サイネージや、非接触操作系に応用が期待されております。特に昨今の新型コロナウイルス感染問題は世界的に深刻な問題であり、不特定多数の人が触るタッチパネルに、急速に「非接触系」への関心が高まってきております。本講演では、空中結像の原理、写像概念に基づく空中結像の幾何学的考察、基盤技術の紹介、応用分野、実績紹介、空中結像の現状と課題、今後の開発動向等について、ご報告させて頂きます。
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18.
DSコーティングを搭載した"RF85mm F1.2 L USM DS"の開発
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キヤノン(株)
石橋 友彦 |
キヤノンはDS(Defocus Smoothing)コーティングを搭載したRF85mm F1.2 L USM DSを2019年12月に発売した。DSコーティングはレンズの中心部から周辺に向け透過率を徐々に下げる効果を持ち、滑らかなボケ描写を実現している。本講演ではこの新開発の薄膜技術及び光学設計への応用について紹介する。
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19.
アナモルフィック結像の収差解析
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宇都宮大学, チームオプト(株)
荒木 敬介 |
Off-Axial光学系では一般的結像であるにも関わらず、あまりきちんとした形で語られることのないアナモルフィック結像について、収差論の観点から解析をこころみる。対称性に注目した収差解析を紹介した後、2つの主値のブランチに注目した縦収差の表現方法についても述べる。また、直交する2方向で結像倍率が異なるアナモルフィック結像において物体面と像面が揃う条件についても解析を加える。
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20.
CeO2-PTFE系多機能膜の物性と特性 - 耐候性、表面硬度、柔軟性を有する多機能膜 -【招待講演】
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中部大学
〇多賀 康訓, 西村 佳祐, 久松 友理 |
CeO2の持つ透明性と紫外光遮蔽機能および硬度およびPTFEに代表されるフッ素樹脂の柔軟性を併せ持つ新しい多機能膜をスパッタ成膜法により開発した。膜厚100nmのCeO2-PTFE膜は波長380nm以下の紫外光の大半を遮蔽し無機ガラスの2〜3倍の表面硬度と〜1cm径の耐曲げ性を合わせ持つことが判った。今後、部材メーカーと連携しながら、省エネ軽量化や耐環境性応用製品開発等に向けた社会実装の検討を開始する。
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21.
回折限界を超えた表面微細周期構造の光学式非破壊深さ計測手法
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東京大学
○神田 曜昭, 久米 大将, 門屋 祥太郎, 道畑 正岐, 高橋 哲 |
半導体デバイスやMEMSなどの微小構造においては,光の回折限界以下の開口サイズを有する微小穴の深さを非破壊で計測する技術が求められている.本研究では,微細開口溝深さを非破壊で計測する新た光学的手法を提案している。本手法では,物質の反射率を既知情報として用いることで遠隔場の結像強度分布から近接場光の位相差を推定する.本発表では手法の概要と周期構造を対象としより高精度を図った手法の改良について述べる.
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22.
ガルバノミラーを用いた撮影角度の高速スイッチング
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東京大学
○江崎 ゆり子, 望戸 雄史, 早川 智彦, 石川 正俊 |
移動式車両を用いた高速道路内のトンネル点検のシステムは報告されており,点検コストの削減に成功しているが,一度の走行で撮影できるトンネル壁面の範囲は限られている.本研究では,点検の効率化のために,ガルバノミラーを用いてキャプチャごとに撮影角度を切り替え,2倍の画角と等価で撮影する手法を提案する.さらに,高速で撮影角度を切り替える際に発生するミラー共振によるノイズを防ぐ手法を提案する.
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23.
自然に隠された美を先端技術で発見する【招待講演】
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京都大学
〇土佐 尚子, Pang Yunian, 中津 良平 |
古来、美は私たち人間の進化の基準になってきた。芸術家は、自然から美を採集してきた。まだまだ自然には、私たちの裸眼で見えない美の造形が潜んで居る。その美を、最先端技術を使って発見し、可視化するアート&テクノロジーの実験的研究方法を解説する。そして、そこから出来上がったアートを社会実装するアートイノベーションに関しても紹介する。
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