第48回　光学シンポジウム
講演プログラム

講演方法については「講演および聴講 方法」をご参照ください。

当日は、発表講演に関するポスターセッションも開催いたします。
発表者または関係者と直接意見交換できるよい機会ですので、ぜひご参加ください。

  場所：東京大学 生産技術研究所 An棟3F 大会議室
     ※講演開催場所であるAn棟2Fのコンベンションホールの上階

  時間：各発表の合間の休憩時間、開催終了後の20分間
　　　  ※ポスター前に担当者が不在の場合もあります、ご了承ください。

6月22日(木)

現地受付開始 9:00〜, オンライン受付開始 9:30〜

午前の部　(10:00〜11:30)

開会の辞 (10:00〜10:10)

一般社団法人 日本光学会 会長　川田 善正〔静岡大学〕

1． 高精細な3次元撮像のための   インコヒーレントディジタルホログラフィの研究   【招待講演】    (10:10〜10:50)

NHK 放送技術研究所 信川 輝吉

インコヒーレントディジタルホログラフィ(IDH)は、インコヒーレントな光でホログラムを記録できるため、高精細な3次元撮像を実現するために有望な技術である。しかし、IDHでは、ホログラム記録時のノイズや動画像撮影への対応など、多くの解決すべき技術課題がある。本講演では、それぞれの技術課題を概説し、提案した適応的空間平均によるノイズ低減手法や空間分割位相シフト法による高速撮影技術について紹介する。

2． 光散乱を伴う被写体に対する偏光探査型偏光撮像    (10:50〜11:10)

長岡技術科学大学 1)，株式会社オプトゲート 2)， 兵庫県立大学 3)，CREST, JST 4) 〇坂本 盛嗣 1, 4)，小野 祐樹 1)，守田明生 1)，野田 浩平 1, 4)， 佐々木 友之 1, 4)，田中 雅之 2, 4)，川月 喜弘 3, 4)，小野 浩司 1, 4)

先に我々は、偏光照射と偏光撮像の両機能を備える偏光探査型偏光撮像装置を開発し、従来の無偏光照明下における偏光撮像と比べて、開発装置が被写体情報をより詳細に可視化できることを示した。今回我々は、光散乱が偏光探査型偏光撮像に与える影響を調査した。その結果、光散乱媒体後方に置かれた複屈折媒体の異方性分布の可視化や、外光が映り込んだ計器の目盛り部分の高コントラスト化などが可能であることを明らかにした。

3． ダブルパス導光体による縦長ヘッドライト用光学モジュールの開発    (11:10〜11:30)

三菱電機 森本智英

ヘッドライトは自動車のデザインを決める大きな要因となっており、省電力化に加えて意匠性の向上も求められている。今回、光束を二つに分割して導光するダブルパス導光体を考案し、高効率で新しい縦長のデザインを提供する縦長ヘッドライト用光学モジュールを開発した。二つに分割された光束は一方はカットオフ配光を、もう一方はワイド配光を形成し、重ね合わせることでヘッドライトに求められる配光を実現した。

─ 展示企業告知 (11:30〜11:40) ─

─ 昼食 (11:40〜12:40) ─

午後の部　(12:40〜17:20)

4． IoT（手段）から SoT（目的）へ   【招待講演】    (12:40〜13:20)

エバ・ジャパン株式会社 〇大橋 郁，高良 洋平，野呂 直樹

近年、様々な分野の研究・産業用途において、ハイパースペクトルカメラの活用が進みつつある。ハイパースペクトルカメラは単なるR&D用の技術ではなく、現場の課題に応えるソリューションという「目的」に至るための「手段」である。本講演では、豊富な活用実績をもとに、あらゆる産業から日常生活に至るまで、ハイパースペクトルイメージングが活用され、人々の生活を豊かにする近未来の展望について紹介する。

5． 波長6μm帯量子カスケードレーザーを用いたアミロイド繊維の   超解像赤外吸収イメージング    (13:20〜13:40)

静岡大学 1)，浜松ホトニクス株式会社 2) 〇濱田 悠太 1)，廣瀬 敏晃 1)，道垣内 龍男 2)， 建部 厳 2)，河田 陽一 2)，小野 篤史 1)

本研究目的は，タンパク質の立体構造形成過程に生じる凝集メカニズムの解明である．タンパク質の凝集によりアミロイド繊維が形成され，神経変性疾患の原因となる．アミロイド繊維を分子レベルの空間分解能にて観察する手法として，我々は近接場赤外吸収分光法を適用した．本研究では近接場走査型顕微光学系を構築し，アミロイド繊維に多く含まれるβ-sheetの吸収ピークとなる波数1630 cm-1において超解像赤外吸収イメージングを実証した．

─ 休憩 (13:40〜14:10) ─

6． レンズレスカメラに適した深層学習モデルとは   【招待講演】    (14:10〜14:50)

東京工業大学 山口 雅浩

高機能・超小型画像センサデバイスに向けて注目されるレンズレスカメラでは、計算機による画像再構成が必須であるが、既存手法では画像品質が不十分・計算時間が長いという課題がある。深層学習（DL）の応用も有望であるが、既存のDLはレンズレス光学系の特性を効率的に学習できず良好な性能を達成できない。本講演では、この問題を解決するアプローチとして、セルフアテンションと呼ばれるメカニズムに基づく機械学習モデル「ビジョン・トランスフォーマー」を用いた新たな再構成と、再構成を省略した物体認識の技術を紹介する。

7． Off-Axial収差理論の主光線まわりの展開への適用（I）    (14:50〜15:10)

宇都宮大学，チームオプト株式会社 荒木敬介

現状のスマホの光学系等に見られる変曲点をもつ非球面を多用する光学系の収差論的解析においては、軸外物点の主光線のまわりの収差展開が必要になって来るが、従来から著者によって提案していた折れ曲がった基準軸に沿った収差展開を使うOff-Axial理論が有用な解析の手段となる。今回の発表では、Off-Axial理論をこうした光学系に適用するにあたっての課題とそれを解決するための解析の第1弾について報告する。

8． デフォーカス収差の直交展開式の解析的導出と干渉計測の補正精度向上    (15:10〜15:30)

京セラ SOC 株式会社 1)，東京工芸大学 2) 〇田邉 貴大 1)，豊田 光紀 2)，渋谷 眞人 2)

干渉計測では外乱に起因するデフォーカス収差の減算が必要である。従来の近軸パワーによる補正は項数の不足により、高 NA 光学系の測定において見かけの球面収差が発生するという問題があった。また、Taylor 展開を用いる改良法では、直交展開ではないことによる誤差が残存する。本講演では、デフォーカス収差の厳密な直交展開を解析的に導出し、見かけの球面収差を回避した正確なフォーカス補正が可能になることを示す。

9． 被写界深度拡大技術を搭載した消化器内視鏡    (15:30〜15:50)

オリンパスメディカルシステムズ株式会社 ○露木 浩，本間 博之

弊社では、被写界深度拡大技術（EDOF）を搭載した消化器内視鏡を、2020年にリリースした。結像光学系には、焦点位置が異なる2画像を同時に得るための光路分割プリズムユニットを実装し、画像処理にて画像合成を行ってリアルタイムにEDOF画像を得ている。本発表では製品の簡単な紹介と、EDOFを実現するために開発した光学要素について説明する。

─ 休憩 (15:50〜16:20) ─

10． 構造化照明イメージスキャニング顕微鏡の開発    (16:20〜16:40)

株式会社ニコン ○藤掛 陽輔，照井 勇輝，新谷 大和，中山 繁

イメージスキャニング顕微鏡は超解像蛍光顕微鏡の一種であり、共焦点蛍光顕微鏡のピンホール及び点検出器を光検出器アレイに置き換えることで、空間分解能及びSNRを向上させる手法である。イメージスキャニング顕微鏡の照明形状を工夫することで、超解像性能をさらに向上させることが可能である。本講演では原理および実験評価結果について報告する。

11． メタレンズとAIを融合したスペクトル撮像技術   【招待講演】    (16:40〜17:20)

NTT コンピュータ＆データサイエンス研究所 曽我部 陽光

スペクトル画像は人の眼では区別困難なものの可視化に利用できるが，撮影装置の複雑さや高速撮影が困難なことから現在の利用は限定的である．本講演では，NTTが開発したシンプルな装置構成で動画撮影可能なスペクトル撮像技術を紹介する．本技術は光メタサーフェス技術と深層学習技術の組み合わせからなり，光学，深層学習両方の観点から本技術を解説する．

6月23日(金)

受付開始　9:30〜

午前の部　(10:00〜11:40)

12． 量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化による     メタマテリアル開発   【招待講演】    (10:00〜10:40)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 田村亮

機械学習の力を使って，次に作製すべき材料を適切に提案できる手法として，ベイズ最適化を代表としたブラックボックス最適化がある．しかしながら，材料の組成，構造，プロセスの多様性から組合せ爆発が起こってしまい，通常のブラックボックス最適化では非常に計算時間がかかってしまう．そこで，この問題を回避するために，量子アニーリング技術を用いた離散・連続ブラックボックス最適化手法を開発した．組合せ爆発が起こる例として，メタマテリアル材料に着目し，本手法を適用した事例を紹介する．

13． 複合成膜により成膜された     SiO2モノマテリアルマルチレイヤーコートの基礎研究    (10:40〜11:00)

東海大学 1)，株式会社シンクロン 2) 〇田島 直弥 1)，室谷 裕志 1)，松平 学幸 2)

光学薄膜の充填密度(屈折率)を制御することで、光学フィルタの光学性能を向上させることができる。我々が開発した複合成膜手法は異なる充填密度（屈折率）の膜を同一装置内で作製できる。複合成膜では屈折率1.17~1.47までのSiO2光学薄膜を作製することができる。つまり、基板と同一膜材料のみで構成された光学多層膜(モノマテリアルマルチレイヤーコート)を作製可能である。本報告では基板・膜をSiO2のみで構成した光学多層膜を報告する。

14． 複合成膜により成膜されたSiO2・TiO2低屈折率混合膜の親水性の評価    (11:00〜11:20)

東海大学 1)，株式会社シンクロン 2) 〇遠藤 孝祐 1)，室谷 裕志 1)，松平 学幸 2)

一般に、通常のSiO2コートガラスでは最初に親水性の表面状態であっても、大気中の炭化水素の付着によって表面が疎水化される。開発した複合成膜手法により成膜された低屈折率SiO2光学薄膜は、成膜後１年以上経過してもその構造により親水性を維持できる。この低屈折率SiO2光学薄膜にTiO2を組み合わせることで親水性の再生機能を付与できると考えられる。本報告では、複合成膜手法により作製されたSiO2とTiO2の低密度混合膜について報告する。

15． 光機能性ナノ粒子の多検体合成と解析    (11:20〜11:40)

コニカミノルタ株式会社 柏木恒雄

我々は、ナノ粒子合成の自動化、合成時のパラメータや分析データの自動蓄積、機械学習の利用による材料開発の高速化技術の開発を進めている。本発表では形状により光学スペクトルが変化する銀ナノ粒子の合成をモデル反応として、その多検体合成と分散液のUV-Visスペクトルの測定、解析を実施したので報告する。

─ 昼食 (11:40〜12:40) ─

午後の部　(12:40〜16:50)

16． 高輝度中赤外レーザーを用いた非侵襲血糖値センサー    ー実用化に向けてー   【招待講演】    (12:40〜13:20)

ライトタッチテクノロジー株式会社， 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 山川 考一

我々は最先端のレーザー技術を結集することにより、手のひらサイズの高輝度中赤外線レーザーを開発し、一定の条件の下、国際標準化機構（ISO）が定める計測精度を満たす非侵襲血糖計測技術を確立した。本講演では、医療機関から一般家庭まで広く普及できる小型の非侵襲血糖値センサーの実用化に向けた開発の現状について報告する。

17． 中赤外パッシブ分光イメージングによる非侵襲血糖値センサーの     放射光伝搬モデル    (13:20〜13:40)

香川大学 創造工学部 1)，香川大学 医学部 2) ◯穴吹 大地 1), 田原 詩織 1), 西山 成 2), 和田 健司 2), 西村 亜希子 2), 石丸 伊知郎 1)

体温から放出される中赤外光（波長：10μm近傍）の分光特性から、体内のグルコース起因の発光ピーク（9.25μm、9.65μm）の検出に成功している。また、従来の採血型や間質液型の血糖値センサーの計測値と発光強度に高い相関を得ることができた。本報告では、体内の分子振動起因による放射光の伝搬モデルを明らかにした。これにより、皮膚数ミリの深さから放出された中赤外光から血糖値を推定できている事を検証することができた。

─ 休憩 (13:40〜14:10) ─

18． 光技術を利用したスマート農業・漁業応用   【招待講演】    (14:10〜14:50)

大阪大学 藤 寛

LED照明は植物工場や集魚灯など農業や漁業への応用が拡がっている。他方、半導体レーザー（LD）光源は未だに農業や漁業応用例が少ないが、既にプロジェクターや照明などに使用され、低コスト化、モジュールやシステムの小型化も進むため、今後、開発事例が増えると思われる。本講演では最近研究されている青色LDを使った害虫駆除技術をはじめとして、光技術を利用した農業や漁業の応用装置・システム技術について紹介する。

19． 回折格子型リング共振器による同心円状光モードの     バイオセンシングへの応用    (14:50〜15:10)

東北大学 1)，富山県立大学 2) ◯五十嵐 アン 1), 室岡 宏彌 1), 大寺 康夫 2), 山田 博仁 1)

回折格子構造を有するリング型光共振器が、ガイドモード共鳴（GMR）型同心円状光モードを発生させ、高Q値の光伝搬モードを制御できることがFDTD法を用いた数値計算により明らかになった。本報告では、高感度のバイオセンシングに必要な同心円状光モードを解析する。その後、リング共振器上および同心円状モードが生成した領域上で生体分子を検出する性能を検討し、実装に向けた光デバイスの構造設計を実施する。

20． 次世代天文学および月・惑星探査機の観測装置用の     新しい透過型回折格子    (15:10〜15:30)

理化学研究所 1)，豊田工業大学 2)，宇宙航空研究開発機構 3)， 大阪大学 4)，ナルックス株式会社 5)，国立天文台 6) ◯海老塚 昇 1), 岡本 隆之 1), 山形 豊 1), 佐々木 実 2), 仲内 悠祐 3), 佐伯 和人 4), 西牧 真木夫 5), 山本 和也 5), 西尾 幸暢 5), 岡田 真 6), 田中 壱 6), 服部 尭 6), 尾崎 忍夫 6), 青木 和光 6)

TMT（30m望遠鏡）や8.2mすばる望遠鏡、次世代付惑星探査機、宇宙望遠鏡用としてVolume binary (VB) gratingやTrapezoid grating、Reflector facet transmission (RFT) grating等のMEMS技術や超精密切削加工技術を応用した新しい製作方法の開発を行っている。これらの新しい透過型回折格子の開発状況を報告する。

─ 休憩 (15:30〜16:00) ─

21． 広視野ホログラフィック光刺激システムに関する研究    (16:00〜16:20)

神戸大学大学院 システム情報学研究科 1)， 神戸大学 次世代光散乱イメージング科学研究センター 2)， 神戸大学大学院 理学研究科 3) ◯土屋 隼平 1), 全 香玉 2), 森田 光洋 2, 3), 米田 成 1, 2), Manoj Kumar 1, 2), 的場修 1, 2)

光遺伝学を用いた細胞活動操作をマウス頭蓋骨越しに実行するために，マウス頭蓋骨越しに複数スポットを生成する実験を行った。頭蓋骨を樹脂で屈折率マッチングさせて，散乱の影響を小さくしてから頭蓋骨の裏側に塗布した蛍光ビーズの蛍光画像を観察した。その結果18 um程度の蛍光スポット像を観察することができた

22． ３次元光計算イメージングと     その生命科学及び散乱透視イメージングへの応用    【招待講演】    (16:20〜17:00)

神戸大学 次世代光散乱イメージング科学研究センター 的場 修

ディジタルホログラフィー，強度輸送方程式，シングルピクセルイメージングなど光計測技術と計算機イメージングを組み合わせた３次元光計算イメージングの研究が盛んに行われている。本講演ではこれらを概観するとともに，応用先として脳神経科学に代表される生命科学や散乱体内部を可視化する散乱透視イメージングについて紹介する。

閉会の辞 (17:00〜17:10)

実行委員長　中川 照隆〔オリンパスメディカルシステムズ株式会社〕