第44回 光学シンポジウム
招待講演の概要

計算機による多様性を実現する社会に向けた超AI基盤に基づく空間視聴触覚技術

講演者
落合 陽一 (ピクシーダストテクノロジーズ(株) / 筑波大学)
講演概要
落合陽一は,大学教員やJST CRESTの研究プロジェクトリーダーとして,デバイスを用いたタスク指向型開発による社会実装として,身体障害や認知機能の補完を目指すプロジェクトを行なっている.この講演では,そういったタスク指向型システムに纏わる網膜投影やウェアラブル光学機器の話題を中心に人間の能力拡張のための光学装置に関する研究についてお話しする.

AI・画像処理技術による外観・目視検査の自動化への取り組み

講演者
青木 公也 (中京大学工学部機械システム工学科)
講演概要
モノづくりの現場では,検査工程は欠くことができない.特に外観検査については,検査対象やキズ・欠陥の種類は多岐に渡り,おびただしい数の個別課題が存在する.技術者・研究者は,一品一様開発での各個撃破を繰り返し,外観・目視検査の自動化は目覚ましい発展を遂げた.一方,変種変量生産への柔軟な対応,熟練検査員と同等レベルの検出能力の獲得等,課題は多い.それに対して,AI技術の外観・目視検査自動化への活用が期待されている.本講演では,産学共同研究事例を紹介し,AI・画像処理技術で何ができるか,どう使うべきかについて解説する.

日本から世界へ!誰もが分かり易い"ダイナミックサイン"を目指して
-時間的・空間的に変化するサインのデザイン-

講演者
坂田 礼子 (三菱電機 デザイン研究所)
講演概要
昨今、空間内にデジタルコンテンツを出力する例が増えており、インタラクティブ性のあるサインによって、人に対して誘導や注意喚起を伝える事例が国内外で多数存在する。既存事例や既往研究から、アニメーション化したサインや、状況に併せて情報を変化するサインは、よりサインの効果が高く、利便性や安全性の向上効果が期待できると分かっている。本稿では、こういったサインを“ダイナミックサイン”とよび、ダイナミックサインによってより快適な施設や交通環境の形成を目指し、時間的・空間的に変化するサインのデザイン要件を述べる。

光音響イメージングの現状と医学生物応用の展望

講演者
石原 美弥 (防衛医科大学校 医用工学講座)
講演概要
光音響イメージングは、光音響分光法(Photoacoustic Spectroscopy; PAS)の原理に基づく現象を利用する。光吸収に伴って発生する超音波を検出してイメージングする技術として医学生物応用が盛んに研究されている。散乱の影響が少ない超音波検出により深部の可視化に利点のある光音響イメージングで生命現象を捉えたら、診たい・観たいにどのように迫ることが出来るか。光音響イメージング研究の最新情報を技術を中心に講演する。

フェムト秒レーザ誘起高速現象を活用したガラスの超高速微細精密加工

講演者
伊藤 佑介 (東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻)
講演概要
電子機器や光学機器のさらなる高性能化・低コスト化を実現するために、ガラス材料の微細加工を高速かつ精密に施す技術が求められている.微細加工が可能な技術としてフェムト秒レーザ加工が注目されているが,この手法には,加工能率が著しく低いという課題と,クラックが形成されるために精密加工が困難であるという課題が存在する.本講演では,これらの課題の生じる要因を高速現象観察と数値計算に基づき解説し,課題を克服した超高速微細精密加工法を紹介する.

光圧が拓く次世代のナノ光工学

講演者
石原 一 (大阪大学大学院基礎工学研究科 / 大阪府立大学大学院工学研究科)
講演概要
2018年のノーベル物理学賞の対象となった「光ピンセット」は光が物質に及ぼす力(光圧)を用いてマイクロ微粒子を捕捉する技術であり、特にバイオ分野の発展に大きく寄与した。最近では光圧を用いて量子ドットや高分子などのナノ物質を直接捕捉・操作し、新奇な物質秩序・機能、また高度な計測・センシングを実現しようとする挑戦が始まっている。本講演では光圧によるナノ物質操作についての最新の研究と期待される応用技術について議論する。

光コムを用いた分光エリプソメトリー

講演者
南川 丈夫 (徳島大学 大学院社会産業理工学研究部)
講演概要
分光エリプソメトリー法は,薄膜や物質表面性状を解析する手法として広く用いられている.我々は,光強度,位相,周波数(波長)が高度に制御された光コムを用いることで,機械操作を必要とせず,高波長分解能,広帯域,かつ高速な分光エリプソメトリー法を実現した.本講演では,光コムを用いた強度・位相分光法について紹介した後に,光コムの偏光計測への応用および分光エリプソメトリーへの応用における特質について議論する.

網膜投影型レーザアイウェア技術:医療福祉応用からスマートグラスまで

講演者
菅原 充 (株式会社QDレーザ)
講演概要
網膜投影型レーザアイウェアはメガネフレーム内側の超小型レーザプロジェクタから瞳孔を通して網膜に画像投影するメガネ型の情報機器である。視力に依存しない鮮明画像が得られるフリーフォーカス、眼鏡フレーム内側に小型光学系を仕込んだユニバーサルデザイン、目のピント位置にかからわらず視野の一部に重なって画面が浮かぶ自然なAR、というこれまでの液晶型アイウェアに無い優れた特徴がある。当社は、これを医療機器として位置づけ、ロービジョンエイドとして弱視者を補助し、さらに視機能検査機器を開発して高度診断・遠隔医療の道を開き、最終的に医療・福祉機関、メガネ店等と連携した社会インフラ構築を目指している。本講演では、医療機器臨床試験、新型視機能検査機器の開発、世界初の民生機器販売等の最近の進展と、本技術の将来展望を紹介する。



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