第46回 光学シンポジウム
招待講演の概要

光無線給電システムへの期待
−最新研究動向と実現への課題−

講演者
宮本 智之 (東京工業大学 未来産業技術研究所)
講演概要
通信に続き給電の無線化が期待されている.光無線給電は,他の電磁波を用いる無線給電より,小型軽量,長距離,電磁波ノイズがないなどの特徴をもつ.このため超小型IoT端末から,情報端末,家電,産業機器,また,ロボット,ドローン,EVなどのモビリティへの適用が期待される.一方で,ビーム光源と太陽電池の確立技術を基礎とするが,その研究開発はまだ非常に限られている.この光無線給電の最新動向,実現に向けた課題を講演する.

ホログラフィーによるアート表現
−建築空間への応用−

講演者
石井 勢津子 (美術家)
講演概要
ホログラフィーをアートの表現メディアとしてとらえ、その可能性について述べる。ホログラフィーは、従来の古典的なアートの表現メディアとは非常に異なるユニークな特長を内包している。アート表現にとっての魅力的特長は3次元画像の記録のみならず多岐にわたっている。ではその特長とはどのようなものか。筆者がこれまで実践してきた作品例を通して、異なる特長を活かした様々な方向の展開とその可能性を紹介する。これらの作品の展示空間はギャラリーや美術館にとどまらず、日常の建築空間から、自然の野外環境空間にまで広がっている。

プラズモニック光波制御による光駆動ナノモーター

講演者
田中 嘉人 (東京大学生産技術研究所)
講演概要
金属ナノ粒子中の自由電子の集団振動、局在プラズモン共鳴により、従来のレンズやミラー等の光学素子と異なり、光波長より小さいナノ空間で光波を制御できるようになる。本講演では、局在プラズモン制御によって顕れる新奇光機能を示すナノ光学素子を紹介すると共に、ナノ光学素子による光の運動量変化(光圧)の制御に立脚した新しい光駆動ナノモーターについて、今後の展望とともに議論する。

イメージセンシング応用に向けた
誘電体メタサーフェス

講演者
宮田 将司 (NTT先端集積デバイス研究所)
講演概要
光メタサーフェスは,波長より小さな微細表面構造から構成され,多様な光制御を実現できる.なかでも,誘電体からなる光メタサーフェスは,光損失が少なく,透過光の位相や偏光,波長分散を自在に操ることができるため,全く新しい空間光学素子として設計できる.したがって,撮像システムの抜本的な小型化や多機能化など,イメージングの形態・機能に大きな変革をもたらす可能性を秘めている.本講演では,誘電体メタサーフェスとそのイメージング応用について,我々の研究を中心に紹介する.

リアルタイムCGにおける
レンズフレア表現技術の発展

講演者
川瀬 正樹 (シリコンスタジオ株式会社)
講演概要
所謂レンズフレアと呼ばれる現象は,本来除去すべきものでありながら,その独特な魅力から映像作品には不可欠な要素として親しまれてきた.ゲーム等のリアルタイムCGにおいても長年にわたり実装され,その手法によって表現の特性も大きく異なっている.本講演では,リアルタイムCGにおけるレンズフレア表現技術について、その変遷や最新の手法、将来可能となる表現への展望について紹介する.

VR/AR向け高輝度・高解像度マイクロLEDディスプレイ開発の現状と展望

講演者
王 学論 (国立研究開発法人産業技術総合研究所
窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ(GaN-OIL))
講演概要
微小な半導体LEDを高密度に配列させたマイクロLEDディスプレイは次世代のVR/AR向け高輝度・高解像度ディスプレイの最有力候補である。しかし、従来のプラズマメサ加工型マイクロLEDはサイズ縮小に伴う発光効率低下や横方向放射に起因する光のクロストークなどの課題を抱えており、VR/ARに必要な解像度、輝度の実現が困難な状況である。当グループでは、従来方式のマイクロLEDの代わりに、微小円錐台におけるエバネッセント光の結合効果を基本原理とする指向性マイクロLEDの開発を進めている。本講演では、従来方式の課題を整理して説明するとともに、指向性マイクロLEDの動作原理や最新の開発状況などについて述べる。

生体光イメージングで解き明かす
細胞動態ネットワークの世界

講演者
石井 優 (大阪大学大学院医学系研究科 免疫細胞生物学)
講演概要
生体では「動き」が重要である。多種多様な細胞の動態は時空間的に精緻にコントロールされている。細胞の動きを見るためには、「生きた細胞」を、「生きた組織」「生きた個体」の中で観察する必要がある。本演者は深部組織の観察に適した多光子励起顕微鏡を駆使して、生きた細胞の生きたままの動きのある世界を捉えてきた。今回の講演では、生体イメージングで捉えることができた細胞動態ネットワークや見ることで発見できた新たな細胞など最新の知見を紹介する。

機械学習で深化するシングルピクセルイメージング

講演者
水谷 康弘 (大阪大学大学院工学研究科)
講演概要
単一画素光検出器でイメージングを実現するシングルピクセルイメージングは,光学系のユニークさだけでなく解析方法の多様性や応用範囲の広さ,従来のイメージング技術では獲得することのできない特徴をもつことから,近年,注目を集めている.特に,AI技術と結びつくことによって,高速化や高精度化が飛躍的に進歩するなど,さらなる深化を遂げている.本講演では,基本的な原理と特徴だけでなく,機械学習を導入するための考え方やその効果を実例を交えて紹介する.



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